ミシガン大ら、サイボーグ化した昆虫に組み込む振動発電デバイスを開発

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ミシガン大学工学部らの研究チームが、昆虫の羽に組み込むタイプの振動発電デバイスを試作したとのこと。発電デバイスをセンサや制御用マイコンなどと一緒に搭載した「昆虫サイボーグ」は、人間の立ち入りが困難な災害現場での初期踏査などに応用が期待できるとしています。

コフキコガネを用いたハイブリッド昆虫のモデル。発電デバイス、神経埋め込み電極、マイクロコントローラ、センサ類などの搭載が想定されている (Khalil Najafi1, et al. J. Micromech. Microeng. 21 (2011) 095016)

「環境発電を用いることによって、昆虫に搭載する微小なカメラやマイク、その他のセンサ、通信機器などへの電力供給が可能になります」とミシガン大の電気・コンピュータ工学教授 Khalil Najafi氏は言います。「これによって、盗聴マイク付き昆虫( ‘bugged’ bugs)を人間のかわりに危険な場所へ送り込むこともできるようになるでしょう」

この技術の基本的なアイデアは、熱や体の動きなど昆虫の生物学的エネルギーを発電に利用するというもの。試作されたデバイスは、昆虫の羽が振動するときの運動エネルギーを電気に変換することにより、昆虫に搭載する電池の駆動時間を延ばすことができるといいます。電池は、昆虫の体に埋め込まれたセンサ(カメラ、マイク、ガスセンサなど)の電源として使われます。

今回、研究チームは、昆虫の体という限られた面積に実装して最大の出力が得られるように、渦巻き型の圧電デバイスを設計しました。高アスペクト比の機械加工によって圧電材料基板からデバイスを作製する技術も開発。材料へのダメージを最小に抑えるため、加工にはフェムト秒レーザーを使用したといいます。

甲虫に実装された試作デバイス2種 (Khalil Najafi1, et al. J. Micromech. Microeng. 21 (2011) 095016)

論文によると、デバイスの位置を最適化した場合、昆虫の体の動きから最大115μWの出力が得られるといいます。実際に2種類の試作品が作製されており、甲虫に実装した結果、デバイス体積11.0mm3のタイプでは出力11.5μW、5.6mm3のタイプでは7.5μWというデータが測定されています(甲虫はつながれた状態で飛行し、羽の振動周波数は85~100Hz)。

さらに、昆虫の羽を模した振動条件を与えたベンチマークテストでは、18.5~22.5μWの出力を確認。昆虫の2枚の羽にそれぞれデバイスを搭載すると、1匹あたり45μW超の出力が得られるとしています。また、昆虫の筋肉にデバイスを直結させれば、より高い出力も期待できるといいます。

昆虫サイボーグが勝手にどこかへ飛んでいってしまわないか心配になりますが、研究チームによれば、小動物の神経系を乗っ取ってその移動を制御するシステムについては、これまでにも様々な研究が行われてきたといいます。過去10年間に報告された研究事例としては、「ラットのひげに関連する脳の中枢に電極を埋め込んで遠隔操作」「サメの嗅覚神経に刺激を与えて泳ぐ方向を制御」「ハトを無線で飛ばす」「ゴキブリの移動制御」といったものがあるとのこと。

最近では昆虫の飛行制御に関しても進展があり、甲虫の触覚付近に微小な熱刺激を加える研究、蛾の中枢神経系へのインターフェースとしてフレキシブルな多点電極を用いる研究、蛾の神経筋へのインターフェースを使って羽ばたきの周波数と振幅を制御する研究、神経と筋肉を刺激するマイクロシステムを昆虫に埋め込んで飛行の開始・中断および飛行中の方向制御を行う研究などが報告されています。今後は、こうした移動制御技術と、センサや電源分野の技術が組み合わさることで、実用的な昆虫サイボーグの開発が進んでいくと考えられます。


発表資料

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