氷の表面が融けるようにバルク表面で電子が融ける現象、アルゴンヌ国立研究所らが発見。ナノデバイス、三次元デバイス設計に重要な指針

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スキーヤーが雪の斜面を駆け下りたり、スケート選手がリンクを滑走するとき、なめらかな滑りができるのは、氷の表面で水が融けて極薄い膜が形成されているためです。最近行われた実験では、同じことが、ある種の結晶材料における表面とバルクの電子構造の界面でも起こることが明らかになっています。

格子状に配列した電子 (Image courtesy of the University of Pittsburgh)

米アルゴンヌ国立研究所の化学者 John Mitchell氏によると、材料科学の研究では、材料の界面や内部で電子を移動させる方法を探すことが課題になることがしばしばありますが、材料の結晶表面の機構と材料下層の電子状態は必ずしも一致するとは限らないといいます。事実、表面とバルクの境界にある層が、かなり粗くなっている場合もあります。

「界面化学における忠実度(fidelity)について考えてみましょう。まず、原子がどの程度規則的に配列し、どの程度きれいに分布しているかということがあります」とMitchell氏は言います。「しかし、その次には第2レベルの機構、つまり電子の忠実度というものもあります」

アルゴンヌおよびブルックヘブン国立研究所の研究チームが示したのは、ある程度大きな規模で結晶構造がほとんど完全にそろって見える場合であっても、結晶表面とバルク構造の間には粗い境界線が見られるということでした。

「そこでは電子構造が完全にそろってはおらず、乱れが存在するのです。このことは、材料内部や材料表面を電子がどのように移動するかに影響します。そこで私たちは、バルクの結晶と比較したとき、こうした粗い界面が温度の関数としてどのように変化するかを調べようとしました。次世代のデバイス構造や新規材料のためには、こうした問題を三次元的に捉える必要があります。つまり、平面方向だけでなく、異なる層の界面をまたぐ方向での電子の動きについて考察するということです」とMitchell氏。「界面をまたぐ情報伝達がどの程度うまくいくかは、界面がどれだけ組織化されているかにかかっています」

アルゴンヌの放射光施設 Advanced Photon Sourceでの表面X線散乱法を使った実験では、酸化物の電子秩序が「融け始める」温度直下での研究が行われました。電子秩序が「融ける」とは、バルクにおいて電子が無秩序になるという意味です。「電子秩序を保てる限界の温度領域(電子の秩序が乱れ始める温度よりもわずかに低い温度)でのオペレーションは、信号の観点からは最も効率の良いものです。しかし、私たちの観察が示している問題は、この局面で表面の電子が最悪の状態になり得るということなんです」

「ここでは、アイススケートと同じ原理が、微視的なレベルで働いています」とMitchell氏。「バルクがまだ凍っていても、表面の電子は先に融け始めるのです」

Mitchell氏は、この発見が、電子的界面を明確に形作る必要がある次世代の電子バイスと重要な関わりをもつとしています。表面での電子の挙動によって性能が大きく左右されるナノスケールのデバイスには、特にこのことがよく当てはまるでしょう。「課題は、電子的な表面粗さがより小さくなるように材料設計を行う方法を見つけだすこと」と同氏は言います。


発表資料

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