「太陽電池から光がたくさん出たほうが変換効率良くなる」バークレー研究所が報告

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太陽電池の変換効率の鍵は、「どれだけ多くの光を太陽電池が吸収するか」ではなく、「どれだけ多くの光が太陽電池から放出されるか」にあるとのこと。米ローレンス・バークレー国立研究所らの研究チームが報告しています。また、この理論をもとにして、実際に変換効率が非常に高い太陽電池の作製にも成功したそうです。

これまでの知見とは逆に、太陽電池からの光の放出が多いほうが変換効率が良くなるという (Image courtesy of DOE NREL)

「高性能の太陽電池は、同時に高性能のLEDであることが求められます」と、研究リーダーであるバークレー研究所の電気工学者 Eli Yablonovitch氏は言います。「これは、直観に反することです。なぜ、太陽電池が光子を放出すべきなのか? 私たちの研究が実証したのは、太陽電池が光子を放出すればするほど、その電池は電圧が上がり、変換効率が良くなるということなのです」

研究チームが発表した論文では、太陽電池が光を電気に変えることができる理論最大変換効率に近づくために、外部蛍光がどんな役割をするのかが説明されています。この理論限界は「ショックレー・クワイサー限界(SQ限界)」と呼ばれており、単接合のpn接合太陽電池では、およそ33.5%という値とされます。これは、太陽電池1m2あたり1000Wの太陽エネルギーを集めた場合、そこから得られる電力がおよそ335Wであることを意味しています。

研究チームの Owen Miller氏の計算によれば、SQ限界にとどく能力を持っているのはガリウムヒ素(GaAs)半導体であるとのこと。Yablonovitch氏が設立したプライベート企業Alta Devicesでは、この研究成果をもとに、変換効率28.4%のGaAs太陽電池の作製に成功しているといいます。

Alta Devicesが作製した薄膜GaAs太陽電池。単接合で変換効率28.4%を記録 (Image courtesy of Alta Devices, Inc.)

「Millerは、SQ限界に到達する方法について、はじめて外部蛍光効率も踏まえた精緻な理論を提供してくれました」とYablonovitch氏。「GaAsについての彼の計算では、外部蛍光によって電圧の上昇が起こることが示されており、Alta Devicesの研究チームはその後の観察でこれを確認しました」

太陽電池がグリーンエネルギーとして普及していくためには、高効率化と低コスト化が不可欠の課題です。現在商用化されている最も効率の高い太陽電池は単結晶シリコンウェハーを用いたもので、変換効率は23%程度に達していますが、高品質のシリコンは高価な半導体材料であり、光吸収性はあまり良くありません。GaAsはシリコンよりさらに高価ではありますが、光吸収性が良いため、太陽電池セル材料としては非常に少量で済むという利点があります。

「GaAsは同じ膜厚のシリコンと比べ1万倍を超える光吸収性を持っていますが、価格は1万倍も高くはありません。パフォーマンスという点では、GaAsは理想的な太陽電池材料です」と、Yablonovitch氏は言います。

これまで、太陽電池の変換効率を上げる試みでは、より多くの光子を太陽電池セルに吸収させることに力が注がれてきました。セルに吸収された太陽光は電子を発生させますが、電気を得るためにはこの電子をセルの外に引き出さなければなりません。電子を引き出す速度が十分速くない場合、電子は消滅し、エネルギーを放出します。このエネルギーが熱として放出されるときには、太陽電池の出力は低下します。一方、Miller氏の計算が示したのは、放出されたエネルギーが外部蛍光となってセルから出てくる場合には、太陽電池の出力は上がるということでした。

このことについて、Miller氏は次のように説明しています。「開路状態での太陽電池セルでは、電子は行き場をなくして高密度に溜まっていきます。そして理想的な状態では、電子が外部蛍光を発することで、入射してくる太陽光とバランスします。セル内部での光学的損失が低いことの指標として、効率の良い外部蛍光が、SQ限界に近づくための必要条件となっているのです」

Yablonovitch氏が以前に開発した「エピタキシャル・リフトオフ」という単結晶薄膜形成技術を用いて、Alta DevicesではGaAs太陽電池を作製。これまでの太陽電池の変換効率を塗り替えただけでなく、他の太陽電池セル技術とくらべて非常に低コストでの作製が可能になっているといいます。同社では、1年以内にGaAs太陽電池パネルを市場に出せる見込みとのこと。

「太陽電池の変換効率をSQ限界に持っていく試みは、まだ基礎研究の段階です。しかしながら、光取り出しと外部蛍光に関する物理学が、太陽電池の高性能化と密接に関わっていることは明らかです」とYablonovitch氏。彼は、この研究が太陽電池の未来を劇的に変えることになると考えています。「これからの世界では、太陽電池はますます安く、ますます高効率になっていくでしょう」


発表資料

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