米NREL、太陽電池製造工程での熱処理を革新する「光共振炉」開発。製造コスト低減と変換効率向上に期待

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米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が、太陽電池製造工程での熱処理を革新する光共振炉(OCF: Optical Cavity Furnace)の技術開発を進めているとのこと。ウェハー加熱時の面内温度均一性に優れており、加熱・冷却コストがかからず、製造工程における様々な熱処理に対して装置を入替えずに1台で対応できることなどが特徴。変換効率の大幅向上(最大4ポイント増加)も可能になるとしています。

OCFを使ったセル加熱の模擬実験。空洞(キャビティ)の内側が白熱している (Credit: Dennis Schroeder)

熱は、シリコンウェハーの機械的強度保持、酸化、アニール、高純度化、拡散、エッチング、層形成など、さまざまなプロセスに不可欠な要素です。現在、量産で使われている最先端の急速熱処理炉(RTP装置)では、放射熱または赤外線を用いたシリコンウェハーの急加熱が行われています。

一方、今回NRELが開発したOCFは、光学的方法を用いて、太陽電池セルの加熱と高純度化をこれまでにない高い精度で行う技術です。

OCFでは、高反射チャンバ内部に光源を配列することで、非常に高いレベルの温度均一性を実現。ウェハー中央部が1000℃のときの面内温度は、999~1001℃の範囲にすみからすみまで収まるといいます。

また、絶縁性と反射性に優れたセラミックスをOCFの内壁に配し、複雑な光学的形状設計を行うことにより、エネルギー損失をほぼ完全になくしていることも特徴です。OCFの内部では、従来型熱処理炉の半分程度のエネルギーしか使わないといいます。従来は損失されていた分のエネルギーが、ウェハー自体に吸収されるためです。OCFでは、電子レンジのように目標物に対してだけエネルギーが拡散し、容器部分にエネルギーが逃げるということがないのです。

さらに、OCFには、設定を変えることによって、ウェハーの機械的強度検査、不純物除去、接合部形成、ストレス軽減、電子的特性の向上、裏面部の強化など様々な目的に利用できるという光学的利点もあります。

NRELの研究チームはOCFの改良を続けており、この技術を使って、間もなく太陽電池セルの変換効率を4ポイント向上させることができるようになると予想しています。太陽電池業界では、変換効率を一度に0.5ポイント上げられれば成功とされますから、4ポイント増は飛躍的上昇といえます。「私たちの計算では、フォトニック効果を上手く利用することができれば、変換効率16%の材料を効率20%に高められることが分かっています。これはすごい」と研究チームの主任技師 Bhushan Sopori氏は話しています。

NRELと民間パートナー企業AOSは、共同で量産規模のOCF構築も行っています。量産用OCFには、1時間あたり1200枚のウェハー処理能力を持たせるとのこと。OCFのコストを標準的な熱処理炉の4分の1から半分程度に抑えることで、高品質・高効率・低コストでの太陽電池セル生産を可能にし、米国の太陽電池製造業の成長加速を図るとします。

OCFによる処理時間も、従来型の熱処理炉と比べると相当短くなっています。ウェハー1枚のOCFによる処理時間は数分で済むといいます。

現在、年間に数十億枚の太陽電池セルが生産されていますが、これに伴い、多くのエネルギーが熱処理の過程で損失されています。従来型の熱処理炉では、熱伝達によってウェハーを加熱。RTP装置では、シリコンウェハーの温度を数秒間で1000℃と急上昇させるために放射熱を用います。

RTP装置とは対照的に、OCFでは比較的ゆっくりとウェハーの加熱を行うことにより、フォトニック効果を利用しています。ゆっくりと加熱することで、熱処理に必要なエネルギーとその損失を著しく抑えられるという利点もあります。

「すごいのは、1~2kWの光源の冷却に窒素を使う以外、OCFではどのような冷却も行わないということです」とSopori氏。これは、もちろん、OCFでのエネルギー消費の劇的な低下を意味します。

また、光を使うことにより、接合部を短時間・低温で形成することも可能になります。

米国では2035年までに国内電力の80%をクリーンエネルギーで賄うという目標が打ち出されており、太陽光発電では、1Wあたりの発電コストを1ドルまで下げることが課題です。OCFの技術は、この目標の実現に大きく寄与すると期待されています。


発表資料

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