「ヒートアイランド現象は、地球温暖化への影響少ない」スタンフォード大が報告

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都市のヒートアイランド現象によって大気中に放出される熱は、地球温暖化進行にはあまり影響していないとする報告をスタンフォード大学 都市環境工学教授 Mark Z. Jacobson氏らの研究チームがまとめています。ヒートアイランド現象が地球温暖化の大きな要因なのかどうかは、これまで意見が分かれてきた問題であり、今回の研究は、その影響度を定量的に検証した初めての事例であるといいます。

ヒートアイランド現象の影響は2~4%

Jacobson氏によると、産業革命以降の地球温暖化総量(gross global warming)のうち、ヒートアイランド現象に起因するものは全体の2~4%程度。これに対して、温室効果ガスに起因するものは79%、大気中の黒色炭素に起因するものは18%としています。

黒色炭素とは、化石燃料やバイオ燃料を燃やした時に出る「すす」を構成する粒子であり、太陽光の吸収率が高いため、大気の温度上昇の原因となります。地球温暖化総量は、温室効果ガス、黒色炭素粒子、ヒートアイランド現象など、すべての原因によって引き起こされた温暖化を合計した量です。

これに対して、地球温暖化総量から大気中の明色系粒子による冷却効果を差し引いた分を、正味の温暖化(net global warming)とします。明色系粒子は、太陽光を反射して宇宙空間に戻すため、大気を冷却する効果があります。メディアで報じられている地球温暖化は、こちらの正味の温暖化を意味しています。

温暖化懐疑論とヒートアイランド現象

地球温暖化懐疑論者の中には、都市のヒートアイランド現象の強い影響によって気温測定に歪みが生じることで、地球温暖化が起こっているように見えていると主張している人もいます。彼らは、ヒートアイランド現象が地球温暖化の大きな要因となっており、人間の活動によって生じる温室効果ガスよりもその影響度は高いといい、従って温室効果ガスの大幅な削減は必要ないと主張しています。

しかし、ヒートアイランド現象の影響度を直接的に扱う研究が行われたことは、これまでありませんでした。報告されている少数のモデリング研究は、ヒートアイランド現象の地域的スケールでの効果を検証するものであり、地球規模での影響は計算されてこなかったといいます。

そこで今回、Jacobson氏は、ヒートアイランド現象が海水表面温度や海氷、大気安定性、大気中の浮遊粒子濃度、ガス濃度、雲と降雨などに及ぼす地球規模の影響を詳細に検証しました。全地表における都市の領域を1kmの分解能で特性化することで、地球全体をカバーする高精度なシミュレーションを行ったのです。その結果は、上述した通り、ヒートアイランド現象による地球温暖化の影響は少ないということを示すものでした。

「白い屋根」は逆効果?

とはいうものの、ヒートアイランド現象の効果を減らすことは、地球温暖化のペースを遅くする上で意味があるとJacobson氏は言います。

ヒートアイランド現象の主要因は、土の地面や草地を、舗装道路や歩道、ビルに変えてしまうことにあります。地面が舗装されることによって地面や植物の葉からの水分の蒸発が妨げられます。蒸発による冷却効果が得られなくなることで、都市の気温が上昇。加えて、暗色系の道路や建物が太陽光を吸収することで、さらに気温上昇が進むのです。

こうしたヒートアイランド現象の影響を低減するための「地球工学的」な提案の一つに、地球上の建物の屋根をすべて白く塗って光を反射するというものがあります。Jacobson氏のコンピュータ・モデリングでも、白い屋根には、確かに都市の表面を冷却する効果があるという結果がでています。。

しかしながら、白い屋根は、結局のところ正味の地球温暖化を引き起こす原因になるといいます。白い屋根には、わずかですが雲の量を減らす効果があるからです。雲の量が減る主な理由は、白い屋根が大気を安定させることによって、地表から雲へと垂直方向に移動する水分とエネルギーが減少するためだといいます。雲の量の減少によって、より多くの太陽光が地表に到達するようになるのです。

また、白い屋根が反射した光は、次に黒色炭素などの暗色系の大気汚染物質に吸収され、さらに大気の温度を上昇させることになるとしています。

ただし、Jacobson氏の研究では、白い屋根が持っているもう一つの利点については検証されていません。屋根を白くすることによって、熱い時期にエアコンを稼働させるための電力需要が減る可能性があるということです。

これについては最近、国立大気研究センターが研究を行っています。それによると、屋根を白くすることで夏場のエアコン使用度が減っても、冬場の数ヶ月間の暖房使用度が増加することで相殺されてしまい、電力需要は全体としては増えるとのことです。

「白い屋根に投資しても得るものはないようです。最も重要なのは、地球温暖化の要因である大気汚染物質の排出を減らすことです」とJacobson氏は話しています。

太陽光パネルによる温暖化抑制効果

大気汚染物質の排出を減らしつつ、夏場のエアコン需要も同時に減らすための方法の一つとして、屋根に太陽光パネルを設置するということが挙げられます。太陽光パネルは、火力発電所などからの温室効果ガスや黒色炭素粒子の排出を減らすだけでなく、光を電気に変換することによって建物が吸収する太陽光を減らす効果も持っています。白い屋根と違い、太陽光パネルは太陽光を大気中に反射することがないため、反射光が大気汚染物質に再度吸収されて、温度上昇を招くことがありません。

「白い屋根をつけて自宅を涼しくするために、地球温暖化という代償を払うのは、望ましいトレードオフとは言えません」とJacobson氏。「温暖化が進むと、海氷や氷河が融ける速度が速まり、そのことがさらなる温暖化加速の引き金になると考えられます。地球温暖化を抑えるには、もっと効果的な方法があります」

今回の研究では、2005年から2025年までの気候の反応をモデル化。論文は、ネットでも公開されています。


発表資料

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