東工大ら、イオン導電率が非常に高い硫化物系固体電解質を発見。全固体リチウムイオン電池の高性能化に期待

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東京工業大学の菅野了次氏らの研究グループが、イオン導電率が1.2×10-2S/cmと非常に高い硫化物系の固体電解質を発見したとのこと。第52回電池討論会で発表しました。次世代の自動車用二次電池としても期待されている全固体リチウムイオン電池の高性能化につながる成果として注目されます。

(上)Li10GeP2S12のイオン導電率の温度依存性 (下)Li10GeP2S12の結晶構造 (第52回電池討論会 講演要旨集4C20から抜粋)

今回発見されたのは、Li10GeP2S12という硫化物系の固体電解質。これまで全固体リチウムイオン電池用の固体電解質のイオン導電率は高くても10-3S/cmのレベルであり、有機溶媒の電解液に比べると低い値に止まっていましたが、今回これより1桁高い1.2×10-2S/cmというイオン導電率が室温(27℃)で実現されており、これまでのリチウムイオン導電体の中で最高のイオン導電率となっています。また、Li10GeP2S12は、5Vまでの電位領域で分解挙動が見られず、電気化学的な安定性も備えているとしています。

正極、負極、電解質、セパレータなど電池の要素すべてを固体で構成する全固体リチウムイオン電池は、電解液が使われている現行のリチウムイオン電池から安全性・信頼性を飛躍的に高めることができるため、特に自動車用途に適した電池として活発な研究が行われています。固体電解質のイオン導電性が高まることにより、全固体リチウムイオン電池の出力特性向上が期待できます。

硫化物系の特徴は、酸化物と比較してイオン半径が大きく、分極率も大きいため、リチウムイオンが移動しやすいということ。吸湿性が高く扱いにくいなど課題もありますが、今回はイオン導電率を高めることを優先させ、硫化物にターゲットを絞って材料探索を行った結果、Li10GeP2S12の組成比を得たといいます。

試作した全固体リチウムイオン電池の放電曲線。(A)はLi10GeP2S12を電解質に用いた場合、 (B)は75Li2S・25P2S5ガラスを電解質に用いた場合。電流密度が大きくなるにつれて、(A)と(B)の放電容量に差が生じている (第52回電池討論会 講演要旨集4C21から抜粋)

大型放射光施設SPring-8での測定の結果、合成されたLi10GeP2S12は、-173℃~600℃の温度領域で相変化がなく安定に存在できることが分かったとのこと。また、イオン導電率の温度依存性をグラフ化すると、高温から低温までほぼ直線のアレニウスプロットに乗っており、イオン活性化エネルギーは20kJ/mol程度と典型的な高イオン伝導状態の値を示した、としています。

結晶構造については、これまでに報告のない回折図形を示したため、粉末データによる直接法での構造解析を行いました。構造は、PS4四面体とLiS6八面体がc軸方向に一次元的に連結し、その一次元鎖がPS4四面体によってお互いに連結した三次元骨格構造になっています。イオン導電に関与するリチウムは、この骨格構造内に鎖状に入り込んで存在しているといいます。

東工大グループと共同研究を行っているトヨタ自動車は、Li10GeP2S122を電解質とする全固体リチウムイオン電池を試作し、その電池特性を報告しました。

試作した電池の正極活物質にはコバルト酸リチウム、負極活物質にはチタン酸リチウムを使用。正極側は、導電助剤やバインダなどを入れずに正極活物質と電解質だけで正極層を構成。負極側は、負極活物質と電解質に導電助剤のアセチレンブラックを混ぜて負極層を構成。この電池は、電池抵抗が非常に小さく、従来の固体電解質を用いた場合と比べて出力が約5倍向上しているとのこと。今後は、試作した電池の抵抗を解析し、リチウムイオン伝導が電池抵抗にどの程度寄与するかを調べていくとしています。

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