【産総研オープンラボ】商用化が始まるSOFC、分析評価の課題は「高温下での原子レベルの現象解明」

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JX日鉱日石エネルギーが今月17日、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を使った新型エネファームの販売を開始します。固体高分子形燃料電池(PEFC)を使っている従来型エネファームと比較すると、SOFC型エネファームの特徴としては、定格発電効率が10ポイント程度高い45%と高効率なこと、発電ユニット容積がPEFC型比46%減と小型化されていること、高価な白金触媒が使われていないことなどが挙げられます。

JX日鉱日石エネルギーが10月17日から販売開始するSOFC型家庭用燃料電池エネファーム

SOFCのもう一つの特徴は、セラミック電解質を使っており、反応温度が800~1000℃と高温領域にあること。これは、反応に伴う排熱を貯湯や燃料改質に有効利用できるというメリットとなる反面、製品の耐久性・信頼性・安定性を向上していくために不可欠な劣化分析技術にとっては、高温条件下で原子レベルでの電池の挙動を捉えるという難しい課題にもなっているといいます。産総研オープンラボにて、エネルギー技術研究部門燃料電池材料研究グループのマヌエル・ブリト氏に話を伺いました。

燃料電池材料研究グループ ラボ内に設置されたSPM。SOFCが作動する高温条件下で試料分析を行う (産総研)

電池材料の表面状態の観察によく使われる手法として、走査型プローブ顕微鏡(SPM)がありますが、作動中のSOFCの様子を捉えるために、高温環境下でSPMを用いると、試料だけでなくSPMのプローブも熱の影響を受け、原子レベルで激しく振動することになります。SPMでは、プローブ先端を試料に接触させたときのプローブのわずかな歪み量を計測することで試料の表面状態を観察しているため、熱によるプローブ自体の振動が大きくなってくると、そもそも何のデータを取っているのか分からない状態になってしまうのが現状であるといいます。

燃料電池は、多くの場合、都市ガスなどを水素ガスに改質してから燃料として電池内に送り込んで発電しますが、元のガスに含まれるメタンなどの成分が、完全に改質しきれず水素に混じって燃料電池内に入り込むこともあります。この場合、セルの燃料極(アノード)側にメタン由来の炭素が析出し、寿命劣化の要因となることが分かってきています。

高温動作中のSOFC内部で起こっている炭素析出などの様子を原子レベルで明らかにすることができれば、より劣化しにくく信頼性の高い電池材料の開発につながる重要な知見を得られる可能性があります。ブリト氏らは現在、このような分析技術の確立をめざして研究を進めているとのこと。一つのアプローチとしては、他の分析手法によってある程度機構が解明されている現象を高温条件下のSPMで再観察し、そこから得られた情報を基にデータの評価法を検討するといった研究の方向性が考えられるといいます。

顕微ラマン分光法によるニッケル電極での炭素析出挙動の可視化。電解質の変更で炭素析出が抑えられた (産総研)

電池の評価・分析には、電池が作動しなくなってから「死んだ状態」を見るポストモーテム・アナリシスと、作動中の「生きた状態」を見るインサイト・アナリシス(その場解析)というアプローチがあり、特に劣化現象の詳細な分析を行うインサイト・アナリシスの重要性はますます高まっているようです。ブリト氏らのチームでは、レーザ光と試料の相互作用から試料の特性を調べる顕微ラマン分光法を用いて、酸化物・軽元素の相変態によって電池の電気特性が変わる様子などについても詳しく研究。ジルコニア系電解質(YSZ: イットリア安定化ジルコニア)とセリア系電解質(GDC: ガドリニウムドープ・セリア)ではニッケル系燃料極への炭素析出が異なり、GDCのほうが炭素析出が少なくなることなども分かってきています。


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