太陽電池の中でも、これから市場が伸びると予測されているのが集光型太陽光発電(CPV)システム。これは、集光レンズを使って、変換効率が高い多接合型太陽電池セル上に太陽光を集中させ、高効率での発電が行えるシステムであり、特に晴天率が高く強い直達日射が得られる砂漠地帯では、非常に有望な太陽光エネルギー利用方法として期待されています。
注目すべきなのは、CPVに関して、製品の性能評価に必要な出力測定などの基準が、まだ決まっていないということ。太陽電池の国際標準規格を策定しているIEC/TC82にて、標準化に向けた議論がいままさに進められているところです。
日本も、産総研の太陽光発電工学研究センターが中心となって、この議論に積極的に参加しています。国際標準化の議論に最初の段階から関わっていくことが、その後の市場拡大期における製品輸出などで自国の優位性を確保することにつながるからです。
産総研では現在、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と共同で、CPVの評価技術確立に向けた実証実験を進めています。2011年1月からは、岡山市と米国コロラド州オーロラ市の2か所に設置したCPVシステムを使って、屋外での発電性能に関するデータ収集を開始。この実験では、日・独・米3国のメーカーのセルを同一の架台に設置して測定しており、架台の影響を取り除いたセル性能の比較も可能になるとしています。

集光倍率500倍の集光レンズの下に、変換効率30%の多接合型太陽電池が組み込まれている。セル25個(5×5)で1モジュールを構成。32個のモジュールを配置したパネル3枚でシステムが組まれている (産総研)
同システムで使われている集光レンズの集光倍率は500倍で、多接合型セルは変換効率30%という高効率。コロラド州のサイトはCPVに有利な砂漠地帯に設置されており、年間の日照時間は約3000時間。一日平均8時間以上の日照がある計算で、ほとんど1年中晴れていることが分かります。これに対して、岡山市の日照は約2000時間であり、この差が発電性能にどれだけ影響するかも興味深いところです。
今回、SJNも産総研オープンラボに参加し、太陽光発電工学研究センター 評価・システムチームのCPV用ソーラーシミュレータを見学しました。シミュレータは、米国スペクトロラボ製の卓上型装置を使用。実機の写真撮影はできませんでしたが、ほぼ同じ型の製品画像が、同社ホームページに掲載されています(スペクトロラボは、人工衛星用の多接合型太陽電池などを手がけているメーカーなので、CPVのソーラーシミュレータについても高い技術を持っているのだと思われます)。
装置中央部にある白い円盤状の部位が、疑似太陽光の光源です。集光レンズで集中された光を模擬するもので、通常の太陽光の1500倍の強さの光を発します。このため、電源には、大量のキャパシタを搭載した大型の電源装置が使われていました。上半分に弧を描いて並んでいるのはミラーで、それぞれのミラーが特定波長の光を反射し、装置下部に配置したセル試料に光を送る仕組みです。ミラーを調節することで、波長ごとの発電特性を詳細に調べることができます。CPVは直達光の強さに比例して発電能力が上がるため、日本の気象条件には向かないとされていますが、多接合型高効率セルや集光レンズなど様々な要素が集合するシステムであるため、海外輸出市場で日本の技術力を活かしていきたい分野です。
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