「グラフェン・ナノリボンを真っ直ぐ立たせて超高密度デバイス作れる」ライス大らが報告。1cm2に100兆個の集積も可能

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米国ライス大学と香港ポリテクニック大学の研究チームが、リボン状のグラフェンを基板上に直立させることが可能なことを計算によって実証したとのこと。炭素原子1個分の厚さしかないグラフェンを、極わずかな支えだけで立たせることが可能であり、この方法を使ってグラフェンを壁のように配列することによって超高密度の電子部品やスピントロニクス・デバイスを作れる可能性があるとしています。

ライス大と香港ポリテクニック大が、ダイヤモンドまたはニッケル基板上にグラフェン・ナノリボンを直立させられることを計算で実証。1cm2あたり100兆個のグラフェン・ウォール集積、アーチ構造の形成なども可能 (Credit: Feng Ding/Hong Kong Polytechnic University)

研究チームの計算によると、グラフェン・ナノリボンの端部と化学結合できる基板材料としては、ダイヤモンドやニッケルがあるとのこと。基板との接触面が非常に小さいため、グラフェン固有の電気特性・磁気特性がほぼ完全に保たれるといいます。

また、グラフェンは非常に薄いため、1cm2のチップ上にグラフェンの壁(グラフェン・ウォール)で作った電界効果トランジスタ(FET)を100兆個集積することが可能という計算結果も報告されています。

このような超高密度集積ができるとすると、「ムーアの法則」が示唆する半導体の微細化限界が打ち破られる可能性も出てきます。研究チームのメンバーで理論物理学者の Boris Yakobson氏は、ムーアの法則の提唱者であるインテル創設者ゴードン・ムーア本人とかつてこの問題について議論を交わしたことがあるといいます。

「私とムーアがモントリオールで出会ったのは、まだナノという単位が半導体分野に登場したばかりの頃でした」とYakobson氏は当時を振り返ります。「ムーアは、シリコンウェハーについて語るときに、不動産用語を好んで使っていました。彼流の例えを使えば、テキサス州にある平屋のランチスタイルハウスから、香港の超高層マンションに引っ越すように、直立構造のアーキテクチャを採用することでチップ上の回路の集積度を増やすことができる、といえるでしょう」

数分の1nm幅のシート状の材料は非常にしなりやすいものですが、物理法則の働きによって、ダイヤモンド母材の炭素とグラフェンの炭素の間の結合エネルギーは端部で最大となり、また、分子同士は角度が90°のときに強く結合します。このため、グラフェンがダイヤモンド基板上で直立したときにエネルギーが最小化し、安定状態になるのだといいます(研究チームは、ニッケル基板上のグラフェン・ウォールは約30°の角度を取ることも解明している)。

Yakobson氏によれば、隣り合うグラフェン・ウォール同士は7/10nmまで近づけることが可能であり、これが個々のナノリボンの独立した電気特性を維持できる距離だといいます。また、ナノリボンは、シリコンやSiO2、酸化アルミニウム、SiCなどの基板上にも成長させることができるとしています。

グラフェンは、端部の形状によって、ジグザグ型とアームチェア型に分類されます。グラフェン・シートは半金属の性質を持っており、常に電気を通すためエレクトロニクス分野での用途は限られていますが、アームチェア型のナノリボンには半導体的性質があり、リボンを薄くすればするほど、バンドギャップが大きくなります。これは、トランジスタにとって極めて重要な性質です。

ジグザグ型のナノリボンには磁性があります。ナノリボンの両端では電子のスピン方向が逆になりますが、その特性は電流によって制御可能です。このため、ジグザグ型ナノリボンは、スピントロニクス・デバイスに適しているといえます。

どちらのケースについても、グラフェン・ウォールの高さを変えることによって電気特性の調整が可能であるといいます。

また、研究チームは、グラフェン・リボンの両端をそれぞれ基板に接合することにより、ナノウォールをナノアーチ型にすることも可能であるとしています。両端の接合部にかかるエネルギーによって、リボンは基板に対して水平に貼りつくのではなく、中央部が持ち上がったアーチ型になるからです。これは本質的には、半分に切ったナノチューブであり、固有の有用な特性を示す可能性があるといいます。

二次元のブロックを使って三次元のデバイスを形成するには、確かに様々な課題があるものの、それによって得られるものは大きい、とYakobson氏は言い、この研究がサブナノメートル世代のエレクトロニクス技術の基礎を築くものであると指摘しています。


発表資料

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