「シリコンインク」で印刷する高効率太陽電池、導入は中国メーカーが先行。選択エミッタ技術で変換効率5~7%向上

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米イノバライトが開発したインク状のシリコン太陽電池材料(シリコンインク)を、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が分析評価したところ、シリコンインクの利用によって、太陽電池の変換効率を5~7%向上可能なことが確認されたとのこと。太陽電池量産プロセスにシリコンインクを用いた印刷技術を導入することで、製造コストを抑えて太陽電池が高効率化できる可能性があります。

イノバライトが開発したシリコンインク (Credit: Innovalight)

太陽電池では、シリコンの結晶にリンやボロンなどの不純物をドーピングすることで、シリコンの電気伝導特性を変化させ、光電変換を行うpn接合を形成しますが、ここで重要なのが不純物のドープ濃度・ドープ位置を精密に制御することです。ドープ濃度が他よりも高い領域を金属電極直下に作ってあげることで、電極との接触抵抗が小さくなり、変換効率が向上するからです。この技術は「選択エミッタ」と呼ばれています。

シリコンインクの特徴は、溶液中にナノサイズのシリコン微粒子が非常に均一に分散しており、粒子の凝集や容器底部への沈殿が起こらないことです。それでは、このインクを使って、選択エミッタ構造の太陽電池は作れるのでしょうか?

この問題を検証したNRELの研究者 Kirstin Alberi氏は、「選択エミッタ構造が作れるかどうかは、シリコンインクを使って非常に精細な線を印刷できるか、そしてその線の下だけに不純物をドーピングできるのかということ」であると説明します。

再生可能エネルギー研究所での分析に用いられたデュアルビーム電子顕微鏡。試料を設置する真空チャンバの内部 (Credit: Dennis Schroeder)

Alberi氏は、シリコンインクによる印刷技術を使って太陽電池を試作し、高濃度ドープ領域から低濃度ドープ領域へのオーバーフローが起こらないかを調査。その結果は、非常に満足のいく良好なものでした。シリコンインクによる選択エミッタ構造で、太陽電池の変換効率が1ポイント向上したのです。

1ポイント増と聞くと、大したことないと感じる人もいるかも知れませんが、標準的な変換効率15%の太陽電池が1ポイント増えて変換効率16%になれば、ほぼ7%の出力向上となります。大規模な太陽電池工場で、製造コストを上げずにこれだけ性能が良くなるのであれば「ただ同然で、すごいインパクトがある」とプロジェクトリーダーのRichard Mitchell氏は話します。

イノバライトは当初、インクジェット印刷を使った太陽電池製造プロセスを開発し、デモンストレーションを行いました。しかし、多くの太陽電池メーカーはインクジェット印刷になじみが薄く、大きな技術変更をためらったといいます。このデモを通じて分かったのは、スクリーン印刷機であれば、もともと太陽電池メーカーの製造ラインに入っており、エンジニアも新しい技術を理解しやすいだろうということでした。イノバライトとNRELの共同チームは早速、インクジェット印刷からスクリーン印刷へと開発方向をシフト。これにより、太陽電池メーカーでのシリコンインク採用が決まったといいます。

なお、シリコンインクの採用契約をすでに結んでいるのは、JAソーラー(晶澳太陽能)、ハンファ・ソーラーワン、ジンコソーラー(晶科能源)など、すべて中国の太陽電池メーカーとのこと。これらのメーカーでは、スクリーン印刷での選択エミッタ型太陽電池が軌道に乗れば、より高効率化が図れるインクジェット印刷の導入に向かうことも考えられます。

また、米国側の動きとしては、2011年7月にデュポンがイノバライトを買収しています。この買収により、米国メーカーでも、シリコンインクを使った選択エミッタ型太陽電池の導入が加速すると予想されます。


発表資料

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