ウィーン大学ら、炭素の一次元鎖「カルビン」の生成法を開発

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ウィーン大学を中心とする国際研究チームは、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)を利用して、炭素の一次元鎖「カルビン」を生成する新手法を開発した。生成された炭素鎖は、これまでに報告されているものと比べて1桁以上の長さがあり、大気条件中でも安定しているため、これまでよく分かっていなかったカルビンの物性解明が進むと期待される。2016年4月4日付けの Nature Materials に論文が掲載されている。

二層CNT内部に形成された炭素一次元鎖の模式図(出所:ウィーン大学)

二層CNT内部に形成された炭素一次元鎖の模式図(出所:ウィーン大学)

カルビンは炭素原子が一次元状に結合して無限に伸びた炭素同素体の一種であり、1885年に化学者アドルフ・フォン・バイヤーが最初にその存在を指摘した。しかし、大気条件中では非常に不安定であるため、その性質は未だによく分かっていない。

研究チームは今回、DWCNTをナノリアクターとして利用することで、DWCNT内部の狭い空間内に非常に長い炭素の一次元鎖を安定的に生成できることを示した。これまで報告された例より1桁以上多い6000個超の炭素原子が一次元鎖を形成していることが、透過電子顕微鏡法(TEM)、X線回折、近接場ラマン分光法などを組み合わせた観察によって確認されている。実験観察には、つくば市の産業技術総合研究所(産総研)も参加した。

化学的気相成長法(CVD)で作製したDWCNTを高真空下で熱処理することにより、DWCNT内部に炭素の一次元鎖が生成するという。その厳密な生成メカニズムは不明だが、直径0.71nm程度のCNTがナノリアクターとして最も適しているという。CNTの直径をこれより少し大きくすると、らせん状の鎖が形成される。CNTが大きすぎるとリアクターとして機能しなくなる。

理論予想モデルからは、カルビンの機械強度はダイヤモンドやグラフェンを上回り、地上最強となるとされている。また、電気的特性から、量子スピン輸送を利用するナノエレクトロニクスや磁性半導体に応用可能であると考えられている。製造技術の観点からは、今回の新手法がバルクのカルビン量産への道を開くものと期待される。


ウィーン大学の発表資料

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