東工大ら、有機化合物で巨大な熱電効果を発見…既存の熱電材料の100倍

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東京工業大学大学院理工学研究科の町田洋助教と井澤公一教授らは、有機化合物(TMTSF)2PF6(テトラメチルテトラセレナフルバレン塩)の低温の半導体状態において、現在最も利用されている熱電変換材料の100倍にも達する巨大な熱電効果を発見した。大きな熱電効果を発現する新しい熱電材料の開発につながるものと期待される。韓国・梨花女子大学、パリ高等物理化学学校との共同研究成果。2016年2月25日付けの Physical Review Letters に論文が掲載されている。

有機化合物(TMTSF)2PF6のゼーベック係数Sの絶対値の温度依存性(出所:東京工業大学)

有機化合物(TMTSF)2PF6のゼーベック係数Sの絶対値の温度依存性(出所:東京工業大学)

今回の研究では、絶対温度12K(マイナス261.15 ℃)で金属から半導体へと変化する(TMTSF)2PF6に着目。(TMTSF)2PF6のゼーベック効果(物質の両端に温度差を与えると起電力が発生する現象)を極低温で観察し、そのゼーベック係数S(温度差1K当たりに発生する電圧)を精密測定した。その結果、同物質のゼーベック係数Sは電気が非常に流れにくい極低温下でも顕著な増大を示し、0.1K(マイナス273.05 ℃)付近では40mV/Kと非常に大きな値に達することを見出した。

多くの半導体は低温下でゼーベック係数の減少傾向を示す。低温でゼーベック係数が顕著に増大する(TMTSF)2PF6の挙動は、これとは明らかに異なっている。また、ゼーベック係数Sは、シリコンやゲルマニウムなどの典型的な半導体材料の10倍大きく、現在最も利用されているBiTe系熱電変換材料の100倍と非常に巨大な値である。「半導体の熱電効果は低温で消失する」という従来の理論予測を覆す結果であり、半導体の熱電現象に対する考え方に修正を迫るものであるといえる。

今回見つかった極低温での(TMTSF)2PF6のゼーベック効果は、新しいメカニズムに基づく新奇な現象であることが強く示唆される。過去の研究では、電子間に働くクーロン相互作用によって半導体のゼーベック係数が低温においても有限に残るという予測もあり、今回の現象がこの理論で説明できる可能性もある。


東京工業大学の発表資料

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