ローマ大学サピエンツァ校らの研究グループは、グラフェン負極とリン酸鉄リチウム正極を用いた新規リチウムイオン電池を開発した。比容量165mAh/g、エネルギー密度190Wh/kgの性能を実現している。2014年7月15日付けの Nano Letters に論文が掲載されている。
今回の電池では、負極にグラフェンのナノフレークを分散させたインクを用いた。グラフェンナノフレークインクは、超音波処理によってグラファイトを液相中で剥離してグラフェン化した後、超遠心分離法によって大きなフレークを取り除き、横サイズの小さなグラフェンフレークに揃えたものを溶液に分散させて作製した。グラフェンフレークのサイズを小さくすることで、大きなフレークやグラファイトに比べて、質量当たりのエッジ活性サイトが多く得られるという利点がある。
室内環境において、このグラフェンインクを140℃の温度で多結晶銅基板上に滴下して、グラフェン負極を作製した。溶媒のコンタミネーションを取り除くため、インクの滴下後に、試料には高真空下400℃の加熱処理を施した。
電池セルの構成を注意深くバランスさせ、負極における初期の不可逆容量を抑制することによって、電池性能を最適化し、比容量165mAh/g、エネルギー密度190Wh/kgを実証した。電池寿命については、80サイクル超の充放電サイクルでの安定動作を確認した。
今回のグラフェン負極の方法は、印刷技術との適合性が高く、低コストで量産拡張性があることが特徴。グラフェンを利用した高容量リチウムイオン電池の開発に寄与するものと期待される。
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