東北大、全固体電池用の新規リチウムイオン伝導体を開発

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東北大学大学院工学研究科の高村仁教授と宮崎怜雄奈博士(現:物質・材料研究機構研究員)らのグループが、全固体電池のための新しいリチウムイオン伝導体KI-LiBH4を開発した。酸化物系や硫化物系の固体電解質に比べて飛躍的に成形性が高く、電極材料と良好な接触性を示す水素化物系固体電解質LiBH4(水素化ホウ素リチウム)に着目した。2014年5月20日付けの APL Materials に論文が掲載されている。

左:KI - LiBH4系の格子定数、右:25 mol%LiBH4ドープ KI のイオン伝導度

左:KI – LiBH4系の格子定数、右:25 mol%LiBH4ドープ KI のイオン伝導度



LiBH4は115℃以上で安定な高温相においてLiイオンが高速で移動できることが知られている。高容量負極材料であるLi金属と良好な界面を形成し、全固体電池の高出力密度化を実現しうる電解質として注目される。しかし、高いLiイオン伝導を示すLiBH4高温相ではイオンの二次元的な伝導が示唆されており、結晶のある方向ではイオン伝導性が低く電極反応に寄与できない可能性がある。そこで今回の研究では、Liイオン伝導において異方性を示さない等方的な岩塩型構造のLiBH4に着目して新規材料開発を行なった。

岩塩型構造のLiBH4は200℃以上かつ4万気圧以上の極限状態でのみ存在する。従って、固体電解質として応用するためにはその高温高圧下の岩塩型構造を常温常圧まで安定化することが求められる。研究チームは、岩塩型構造が常温常圧で安定であるKI(ヨウ化カリウム)中にLiBH4をドープするという従来とは逆転の発想により、岩塩型構造のLiBH4の合成に成功した。

合成された固溶体のイオン伝導度の温度依存性から、陽イオン空孔を導入することで伝導度が飛躍的に向上する可能性があることが示唆された。第3の添加元素を探索する必要があるが、最適組成などに関しては今後の課題であるという。

Parasitic Conduction Mechanism の模式図

Parasitic Conduction Mechanism の模式図

LiBH4の濃度の低い試料における伝導機構は、特に注目される。Li電極を用いて直流法と交流法で測定した抵抗値はほぼ等しい値となり、この結果はKI-LiBH4の固溶体中では主にLiイオンが電流を担っていることを表している。すなわちドープしたLiイオン濃度が少ないにもかかわらず、電流はLiイオンによって担われていることがわかる。この結果は、Liをまったく含まない材料中にLi含有化合物をドープし、Liを“寄生”させることで純Liイオン伝導体を合成可能であることを示唆している。研究チームは、この一見奇妙な伝導機構を“Parasitic Conduction Mechanism”と呼んでいる。

着目した材料系の固溶域が限られていても、Parasitic Conduction Mechanism が発現すればLi量に無関係に純Liイオン伝導体を合成可能であり、固溶限による制限を受けないため材料選択の自由度が飛躍的に向上すると考えられる。Liイオン伝導材料にまったく関係の無い母格子を選択し、そこへLiを少量ドープするという今までになかった発想で材料系の開発が可能になると期待される。


東北大学の発表資料

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