東北大学原子分子材料科学高等研究機構の伊藤良一助教、陳明偉教授らのグループが、新規材料「3次元ナノ多孔質グラフェン」の開発に成功した。これまで3次元炭素材料は非結晶性不連続体(粉状)のため電気をほとんど通さなかったのに対して、結晶性の高い1枚の繋がった3次元グラフェンシートを作製することで高い電気移動度を達成した。シリコンに替わる3次元デバイスの開発が期待される。2014年3月28日付け Angewandte Chemie International Edition オンライン版に論文が掲載されている。
3次元ナノ多孔質グラフェンは、図のように立体構造を持つナノ多孔質金属(ニッケル)を鋳型として、その表面に化学気相蒸着(CVD)法を用いてグラフェンを成長させることによって、2次元物質であるグラフェンに3次元構造を持たせた厚みのある物質。この3次元ナノ多孔質グラフェンの電気デバイス特性を調べたところ、電子の移動度が最大で500cm2/Vsを示し、トランジスタで必要とされている性能値200cm2/Vs以上であることがわかった。今後、炭素材料を使って3次元デバイスを作製する上での重要な成果と考えられる。
3次元ナノ多孔質グラフェンの電子状態を調べた結果、2次元グラフェンと同じくディラックコーン型の電子エネルギー分布(状態密度)を持つことが分かった。移動度の温度依存性については、高温になるにつれて移動度が減少していくが、室温で200~400cm2/Vsの値を示した。これは2次元グラフェンより少し低い程度であるという。これらの結果から3次元グラフェンは2次元グラフェンの特徴を引き継いでいることが分かる。
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