NTT物性科学基礎研究所とNTTセキュアプラットフォーム研究所が、光格子中に束縛された約100万個の原子に対して量子コンピュータのリソースとなる大規模な量子もつれ状態を高精度かつ高速に生成する手法を世界で初めて確立した。量子ビットのサイズ拡張性やエラー低減などが可能となるため、100万ビット規模の量子計算が実現できる可能性が出てきた。2014年3月17日付け Physical Review Letters 電子版に論文が掲載される。
量子コンピュータの計算リソースとして用いることのできる大規模な量子もつれ状態を光格子中に束縛された原子に対して高精度(理想的なもつれ生成に対して99%以上の一致度合い)かつ高速(1ms程度)に作る手法を確立した。
これまで量子もつれの生成では、精度よくゲート操作をしようとすると遅くなってしまい、速くゲート操作を行おうとすると精度が悪くなるというトレードオフがあった。また、大規模量子もつれ状態を生成しようとすると複数の量子ビット間でクロストーク(混線)が起こり、エラーが大きくなるという課題があった。今回の研究では、レーザー光やその強度の調整により光格子を巧みに設計することで精度と速度のトレードオフおよびクロストークの問題を解消した。
今回の量子もつれ生成方式は、レーザー光やマイクロ波などの照射やその強度調整など、確立されている技術を組み合わせて容易に実装できるシンプルなものであることが特徴。現状のサイズ限界(約100万個)は原子の束縛技術に依存しており、今後さらに大量の原子が束縛可能になれば同方式を同じように適用できるとしている。NTTでは、今後5年以内に1万ビット程度の測定型量子コンピュータが実現できるよう研究開発を進めるという。
NTTの発表資料
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