立命館大学理工学部機械工学科の飴山惠教授が、金属材料の力学特性を飛躍的に向上させることが可能な材料創製法の開発に成功した。Material Transactions、Material Science & Engineering:A などに関連論文が掲載されている。3月22日には日本金属学会2014年春季大会で成果報告を行なう予定。
医療分野(インプラント、人工関節、微小医療器具など)や航空宇宙分野など、高品質な金属材料が求められる分野では、安全性や耐久性を担保しつつ、部品を小型化・軽量化することが求められている。一方、従来の常識では金属材料は強度と延性のトレードオフが避けられず、靭性(壊れにくさ)が低下することから金属部品の小型化・軽量化には限界があった。
今回、飴山教授は「調和組織制御法」という新しい金属材料創製法を開発した。創製プロセスは、原料金属粉末の表面超強加工、成形・焼結、仕上げの3段階に分かれており、従来の粉末治金法との違いは最初の表面超強加工だけであるという。
原料金属粉末の表面だけに大きな歪を与えることで、粉末表面にナノメートル寸法の超微細結晶粒組織が形成される。その後、成形・焼結を行うことで、微細結晶粒のネットワーク組織が粗大結晶粒を包み込む構造を持った金属材料が創製される。微細結晶部分が高強度を発揮し、粗大結晶粒が延性を保つことで、全体として高強度と高靭性を両立させるメカニズムであるという。
これまでの研究から、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、Co-Cr-Mo合金(コバルト合金)、ステンレス鋼などほぼすべての金属材料において、従来の創製法に比べ、高強度と高靱性の両方を付与できる方法であることが明らかとなった。例えば、生体材料としても使われる純チタンの場合、従来手法と比較して、引張強さ1.5倍、靱性2.2倍と強度と靱性の両方が同時に向上することがわかり、高信頼性が実証された。
2014年4月より、金沢大学医薬保健研究域の山岸正和教授と共同で、同法で加工したCo-Cr-Mo合金、純チタンなどの金属材料をもとにステントを試作し、将来の実用化を見据えた研究を開始する予定とのこと。
立命館大学の発表資料
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