9/20付け日本経済新聞の記事によると、中国の太陽電池メーカー晶科能源による環境汚染問題を受けてニューヨーク株式市場での同社株価が19日に前週末比29%安の6.44ドルまで下落したとのこと。この問題では、中国浙江省東部、海寧市にある晶科能源の子会社、浙江晶科能源の工場から太陽電池の製造過程で発生するフッ素化合物を含む廃棄物が処理されないまま周辺河川に流出。魚の大量死が発生し、近隣住民の抗議で罰金処分や工場の操業停止に発展したとも報じられています。
太陽電池といえばクリーンなエネルギーというイメージがあるため、一般には、あまり知られていないことかも知れませんが、太陽電池の製造過程自体は決して環境によいものではありません。
例えば、太陽電池の製造装置では、温暖化係数がCO2の数千~1万倍以上もあるPFCガスが、真空チャンバーのクリーニングなどに使用されることがあります。また、薄膜シリコン太陽電池の材料であるモノシランは、空気に触れただけで爆発する危険なガス。これ以外にも、人体・環境に対して有害なガス・薬液などが大量に使用されているのが現実です。
もちろん、こうした環境負荷を極力低減するため、ほとんどの太陽電池メーカーでは、PFC代替ガスとして、より温暖化係数の低いガスを使用したり、使用後のガス・薬液を工場外に排出する前に専用の処理装置を使って無害化するなど、厳しい環境対応策、安全対策が講じられています。
しかし、これらの環境・安全対策コストは最終的には製品価格に上乗せされるもの。メーカーが環境配慮を軽視して、価格競争力だけを追求しようとすると、今回の晶科能源のような問題が起こるわけです。様々な報道からうかがわれる中国での安全・人命軽視の体質を考えれば、太陽電池だけが例外とは考えられず、「クリーンエネルギー産業による環境汚染問題」は、報道されないものも含めると、かなり発生しているのではと懸念せずにはいられません。
中国の太陽電池産業は、一部でバブルの様相を呈しつつも成長を続けています。矢野経済研究所のレポートによれば、日本国内の市場でも中国・韓国など海外メーカーが拡大傾向にあり、2010年度には海外メーカーの国内シェアが13.0%まで伸びたとしています。
現在、導入に向けた準備が進められている再生可能エネルギー全量買取制度が実施されれば、価格の安い中国製太陽電池の国内市場への流入はますます増加すると予想されます。
全量買取にかかる費用は、結局のところ、電気料金あるいは税金として日本国民が負担するものです。このまま制度が導入されれば、環境汚染を引き起こしている中国の太陽電池産業を日本が国民負担で育成するという不条理な状況にもなりえます。こうした問題があることも踏まえた上で、全量買取の制度設計・運用については今後深い議論が必要でしょう。

5年ぐらい昔にも粗悪品造ってた中国企業が環境汚染引き起こして、欧州等で中国製品全体の規制が議論されたことがありました。きっちり対応が取られないようならば、他国にとって規制の絶好の口実になるように思います。中国当局の対応が、焦点になるでしょうね。
輸入は多すぎても駄目ですし、品質の悪い製品や環境対策が不十分な製品も防がねばなりません。しかし中国製品でも質や環境性能を売りにする製品は出てきていますので、そういう製品はむしろ国内企業と競争させるのが望ましいと考えられます。
13%では、まだ少なすぎると思われます。国内メーカーはそれよりずっとたくさん輸出していますので、貿易収支上もまだ余裕があります。
健全な価格競争によって発電コストが下がり、コスト低下が太陽光の普及を促すということは、議論の前提として大切ですね。
ただし、除害処理など必要な環境対策をカットするような不健全な価格競争を、全量買取が容認・助長することにならないように、制度設計をしっかりやることが必要と考えています。いまの政権のやり方を見ていると、とにかく全量買取を導入するということだけが決まっていて、ここで指摘しているような問題意識があまり感じられないのですよね。特に、中国が相手だと、民主党はどうにも弱腰になるので心配…。
ええ、粗悪品の監視は常に必要ですね。こうやって取り上げて頂くことが圧力になりますので、ガンガンやってください。B)
制度に環境対策の規制を組み込むことは可能ですが、ガチガチにするとそれはそれで普及の遅れを招きかねない(=中長期で環境汚染助長)ので、サジ加減が肝になります。
まぁ中国もバカじゃないので、せっかくの成長産業をコケさせるような真似は避けると思うのですが。
ホントは欧州のPhoton誌のように、製品や政策を辛口に評価してくれて、しかも影響力のあるメディアが出来るといいんですけど (^^;;