マサチューセッツ工科大学(MIT)とSemiconductor Research Corporation(SRC)が、次世代の半導体リソグラフィとして期待される誘導自己組織化技術(DSA:directed self-assembly)の新手法を開発した。DSAに用いるテンプレートの設計を従来よりも簡単に行なうことができる。パターンの大面積化も容易になるという。2014年2月17日付けの Nature Communications に論文が掲載されている。
現行の半導体リソグラフィには波長193nmのArF液浸露光装置が使われているが、パターン寸法の微細化は20nm程度が限界になるとみられている。20nm以降のより微細なパターンを形成できるリソグラフィ手法としては、EUV露光や電子ビーム直描といった技術があるが、EUVは露光装置の規模が巨大になるためコストが下がらない、電子ビーム直描は一筆書きのためパターン形成に時間がかかるといった問題を抱えている。
ブロック共重合体の自己組織化現象を利用したDSAも、20nm以降の微細パターニングが可能な技術として有力視されている。EUVのように巨大な装置を必要とせず、電子ビーム直描と比べて短時間でパターン形成できるなど長所もあるが、量産技術とするにはプロセス制御などに課題があり、実用化には至っていない。
300mmウェハー上のDSAパターンは、すでに研究開発レベルでは試作されているが、パターン形成に必要なテンプレートの作製にはフォトリソグラフィが使われている。テンプレートの解像度や形状制御にも限界があった。
DSAを実際の半導体製造に用いるためには、比較的簡単な単一のテンプレートを使って、高密度のカーブや接合部、直線部などから構成される複雑なパターン形成を行なう必要があるが、こうしたテンプレートの設計方法はこれまでなかった。
今回の研究では、種類の異なるテンプレートタイルを組み合わせることによって、複雑なDSAパターン形成が可能なテンプレートを作製するための設計手法(デザインルール)を開発した。図は、この方法によるブロック共重合体のパターン形成の例で、一段目(a・b)がテンプレートのレイアウトを表している。テンプレート全体が小さなテンプレートタイルの組み合わせで構成されている。
二段目(c・d)は実際のテンプレートの走査電子顕微鏡(SEM)像。三段目(e・f)は同テンプレート上に形成されたPDMSのパターンのSEM画像で、スケールバーはそれぞれ50nm。四段目(g・h)は同テンプレートを使った場合のPDMSパターンのシミュレーション結果を表している。研究グループは今後、産業界の半導体企業と共同で実用化に向けた開発を進めていきたいとしている。
発表資料
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