九州大、高効率青色熱活性化遅延蛍光有機EL素子の開発に成功

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九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)安達千波矢教授らの研究グループが、新しい有機EL発光材料として注目されている熱活性化遅延蛍光材料を利用した青色発光有機EL素子の開発に成功した。高効率かつロールオフ特性が小さいという特徴があり、次世代の高精細ディスプレイや大面積照明への応用が期待される。2014年3月2日付けの Nature Photonics に論文が掲載されている。

図1:新規熱活性化遅延蛍光材料の分子構造と量子化学計算によって算出したそれぞれの分子の励起エネルギー準位図(1CT/3CTと3LE)(出所:九州大学)

図1:新規熱活性化遅延蛍光材料の分子構造と量子化学計算によって算出したそれぞれの分子の励起エネルギー準位図( 1CT / 3CT と 3LE )(出所:九州大学)

熱活性化遅延蛍光材料は、一重項と三重項励起状態のエネルギーギャップが小さいという特徴があり、電気励起によって生成した励起子をほぼ100%の効率で光へと変換できる。蛍光材料(第一世代)、燐光材料(第二世代)に続く第三世代有機EL発光材料として注目されている。

OPERAでは、これまで数例の青色熱活性化遅延蛍光材料を開発してきたが、励起一重項および三重項状態間の大きなエネルギーギャップにより、逆項間交差を介した高効率な三重項励起子の一重項励起子へのアップコンバージョンが実現できず、高電流密度領域において外部量子効率の大きなロールオフが生じるという問題があった。RGB発光のすべてを熱活性化遅延蛍光材料によって実現するためには、青色発光に不可欠なHOMO-LUMO間のワイドギャップをとりつつ、同時にエネルギーギャップの小さな分子設計を行なって外部量子効率のロールオフを小さくする必要がある。

これまでの青色熱活性化遅延蛍光材料は、局所励起三重項状態(3LE)のエネルギー準位が電荷移動励起三重項態(3CT)のエネルギー準位よりも低く、電荷移動型の励起一重項および三重項状態間のエネルギーギャップ(ΔEST)を電荷移動型励起一重項状態(1CT)と3LEのエネルギー準位差を制御することによって小さくしてきた。熱活性化遅延蛍光材料は電子ドナーと電子アクセプター分子を連結した分子内電荷移動が生じる分子群であり、電子ドナー-アクセプター分子間のねじれ構造を大きくすることにより、電荷移動励起状態下で働く電子間相互作用を小さく抑制することができる。ねじれ構造の導入は電荷移動励起状態を安定化させ、3LEのエネルギー準位を上昇させることになる。

図2:新規熱活性化遅延蛍光材料のドープ薄膜の過渡PL減衰スペクトル(300K)(出所:九州大学)

図2:新規熱活性化遅延蛍光材料のドープ薄膜の過渡PL減衰スペクトル(300K)(出所:九州大学)

図3:新規熱活性化遅延蛍光材料を発光材料に用いた有機EL素子の素子評価結果: (a) 外部量子効率対 電流密度プロット、(b) 各材料から得られたELスペクトル (出所:九州大学)

図3:新規熱活性化遅延蛍光材料を発光材料に用いた有機EL素子の素子評価結果: (a) 外部量子効率対
電流密度プロット、(b) 各材料から得られたELスペクトル (出所:九州大学)

今回の研究では、1CT、3CT、3LEの3つのエネルギー準位を予測・算出するための新しい量子化学計算手法を用いて、励起状態のエネルギー準位と小さなロールオフ特性との間に重要な相関関係があることを明らかにした。具体的には、図1に示す6種類の大きなねじれ構造を有する分子内電荷移動型分子のΔESTおよび3CTと3LEのエネルギー準位間の関係を量子化学計算により算出した。それらの6種類の分子の励起状態を系統的に比較し、4種の電荷移動型分子(DMAC-DPS、PXZ-DPS、PPZ-DPS、PPZ-DPO)が高いPL量子収率と数マイクロ秒オーダーの短い発光寿命を示す熱活性遅延蛍光を発することを明らかにした。

さらに、3LEのエネルギー準位が3CTのエネルギー準位よりも高い上記4種の分子の方が、3LEのエネルギー準位が3CTのエネルギー準位よりも低い残りの2種の分子(PPZ-4TPTとPPZ-3TPT)よりも発光寿命が短くなるという相関関係を明らかにした。

青色の熱活性化遅延蛍光を発するDMAC-DPSを用いて有機EL素子の評価を行った結果、最大外部量子効率が19.5%に達する高効率EL発光を示し、高電流密度領域においてもロールオフが小さいことを明らかにした。

第二世代である燐光材料を用いた有機ELも、100%近い高効率な内部量子効率が実現できるため、現在の有機EL発光材料の主流となっているが、イリジウムや白金などの希少金属元素を用いているという問題がある。第三世代材料の開発が進むことで、フルカラー有機ELディスプレイや白色有機EL照明などの普及に必要な発光材料の低コスト化と高効率発光の実現につながると期待される。


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