「海藻から抽出した成分でリチウムイオン電池が高性能化」 ジョージア工科大らが報告

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ジョージア工科大とクレムソン大の研究チームによると、海藻から抽出した成分でリチウムイオン電池の性能が向上したとのこと。海藻由来のアルギン酸塩を電極のバインダ材料として用いることによって、電池を高容量・高出力化できるとしています。電池に含まれる有害成分を環境にやさしい材料で代替する技術としても注目されます。

リチウムイオン電池を高性能化するという褐色藻類。海中では60メートルの長さに成長する ( Image courtesy of the Georgia Institute of Technology )

海藻成分による性能向上は、従来のグラファイト電極、次世代電池向けに現在開発中のシリコン電極の両方について確認されているとのこと。ジョージア工科大 材料科学・工学助教の Gleb Yushin氏は、海藻を用いることで、より高容量で長寿命な電池を安価に製造できるようになるとし、「環境にやさしい製造方法で電気自動車の航続距離や携帯機器のバッテリ駆動時間を伸ばすことができる同技術が社会に与える影響は大きい」とコメントしています。

シリコンやグラファイト粒子を懸濁させるバインダ材料として海藻に着目した理由について、クレムソン大 材料科学・工学教授の Igor Luzinov氏は次のように説明します。

「電池内部では、電極が電解液に浸かった状態となっています。そこで、海水のような苛烈な環境下で生育している海藻が、天然バインダの有力候補になると考えたのです」

アルギン酸塩は、食品、医薬品、紙、その他の分野ですでに利用されており、均一に分布したカルボン酸基を持つことが特徴です。カルボキシメチルセルロースなど他の材料も、カルボン酸基を含有するように加工可能ですが、コストがかかる上に、アルギン酸塩のような天然の均一分布は得られません。

海藻からのアルギン酸塩の抽出には、炭酸ソーダ(Na2CO3)を用いたシンプルな工程を使用。この工程によって均一な材料を生成します。これにより、シリコンまたはグラファイトを分散させた水ベースのスラリを用いて、環境にやさしいプロセスでの負極製造が可能になります。既存の電極で用いられるポリフッ化ビニリデンのバインダでは、製造工程で有害な溶剤が使用されるという問題がありました。Yushin氏によれば、アルギン酸塩を用いる新規電極は、既存の製造技術との親和性も高く、従来のバッテリ設計に取り入れることが可能であるといいます。

また、次世代電池向けの負極では、充放電時にシリコン粒子の膨張・縮小を許容できるようにすることが、バインダの課題となっています。アルギン酸塩を用いることにより、高エネルギー密度のシリコン負極の使用を制限している最大の問題が解決に向かう可能性もあります。

電池が作動を始めると、分解したリチウムイオン電解液が負極表面に固体電解質界面(SEI: solid electrolyte interface)を形成します。SEIは安定性を保ち、リチウムイオンをよく通す必要がありますが、新たな電解液の流れは抑制しなければなりません。

グラファイト粒子の場合、体積の変化が起こらないためSEIの安定性が維持されます。しかし、シリコンのナノ粒子では、電池の作動中に体積の変化が起こるため、クラックが形成されます。クラックは新たな電解液の分解を招き、分解はイオンの流れる孔が詰まるまで続きます。これが電池の不良の原因となるのです。研究チームは、アルギン酸塩がシリコン粒子を他の粒子や負極の金属箔に結合させるだけでなく、シリコン粒子自体を包み込んでSEIの強度を保つことによって、劣化を防ぐ働きをするとしています。

実験では、既存の最高品質のグラファイト負極に比べて、アルギン酸塩を用いた負極では、可逆容量が8倍増加することが実証されたとのこと。さらにクーロン効率は100%近くになり、1000回超の繰り返し充放電サイクルを経ても故障はみられなかったと報告しています。

研究チームは今後、他の種類のアルギン酸塩についても調査し、さらなる電極性能の向上と材料が作用する仕組みの解明を行いたいとしています。

アルギン酸塩は天然の多糖類であり、褐色藻類が60メートルもの長さに成長するのを促す物質です。海藻は、海中で巨大な森となって繁茂し、汚れた池でも育てることが可能です。

「褐色藻類は、アルギン酸塩を豊富に含んでおり、地球上で最も成長速度の速い植物の一つです。それは電池性能を向上でき、比較速く安価で生産可能で、しかも現在使われているある種の材料よりも安全性が大幅に高いという特徴を持っています。我われが必要としているすべての特性が、ここに揃っているんです」と Luzinov氏は話しています。


発表資料

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