米パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)が、従来比2倍超のエネルギー密度を持つマイクロバッテリーの開発に成功した。サケなどの魚類の行動追跡に用いる音波発信器の電源として利用される。2014年1月21日付け Scientific Reports に論文が掲載されている。
今回作製されたマイクロバッテリーは、長さ6mm、幅3mmの円筒形で、重さは70mgとなっている。既存の魚類追跡用音響タグに使われている電池は重さ135mg程度あるので、半分程度に軽量化されたことになる。電池のエネルギー密度は240Wh/kgとなっており、既存の商用酸化銀ボタン電池の100Wh/kg程度と比べて2倍超を実現している。
家庭用乾電池で使われているゼリーロール技術を改良して適用することで、マイクロバッテリーの高性能化に成功した。正極材料にはフッ化炭素、負極材料にはリチウムを用いた。これらの電池材料の層を重ねてゼリーロール状に巻いて封止することによって、電池の厚さやサイズは増やさずに電極面積が大きくとれるようになった。電極面積の増大により、マイクロバッテリーのインピーダンス特性が向上した。
今回の電池を使って魚類追跡用の音波発信器に電源供給した場合、744ミリ秒の音響信号を3秒間隔で3週間、5秒間隔で1か月間送信し続けることができる。送信される信号の強度は、大規模ダムの傍などの騒音環境であっても十分利用できる強さであるという。
電池および送信機を小型化できるため、これまで音響タグの取り付けが困難だった小さな若魚の行動も追跡できるようになる。PNNLの研究チームは昨年の夏、700個のタグをサケに埋め込んでスネーク川流域での行動追跡試験を行い、良好な結果を得たとしている。
発表資料
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