東大、柔らかいワイヤレス有機センサシステムを開発。おむつに装着可能な使い捨てセンサなどへ応用

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東京大学の桜井貴康教授、染谷隆夫教授らの研究グループが、有機デバイスだけで構成された柔らかいワイヤレス有機センサシステムの開発に成功した。世界初の成果であるという。開発したセンサシステムは、離れたところからワイヤレスで電力供給が可能で、水分検出などに使える。おむつや絆創膏に装着する使い捨てセンサなどへの応用が期待される。2014年2月9日から13日まで米国サンフランシスコで開催中の「国際固体回路会議(ISSCC)2014」で成果報告が行われる。

図1 柔らかいワイヤレス有機センサシステム。水分を検出してワイヤレスで電力やデータを伝送できる。おむつや絆創膏に張り付けて使い捨ても可能 (出所:東京大学)

人体に接触しながら生体に関する情報を計測するセンサシステムには、装着感のない柔らかさ、衛生面から使い捨てにできることなど、従来の電子部品に求められてこなかった課題がある。特に電池などの外部部品を取り付けるとセンサシートが厚くなり、曲がらなくなるため、ワイヤレス送電が可能なフレキシブル有機デバイスで電子回路のすべての要素を構成し、集積化する技術が求められていた。

今回の研究では、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムに様々な有機集積回路を作製することで、ワイヤレスで電力およびデータ伝送可能なフレキシブル水分検出センサシートを開発した(図1)。センサが水分を検出すると、数Hzの信号を出力する。周波数3Hzの場合、センサの消費電力は1.4μWであるという。

図2 ワイヤレス通信可能かつ静電気保護回路を有するフレキシブル水分検出センサシート。コイルが曲がっても動作する (出所:東京大学)

有機集積回路を駆動するための電力伝送として電磁界共鳴法を採用した。電磁界共鳴法による電力伝送が有機集積回路にも応用できることが実験で示されたのは今回が世界初であるという。有機集積回路は、ショットキー型の有機ダイオード、有機トランジスタ、キャパシタといった様々な電子部品を高分子フィルムの上に集積化して作製される。いずれの部品も柔らかく、システム全体としてもくにゃくにゃと曲げられる柔らかさを兼ね備えている。

図3 (a)有機ダイオードによる整流回路、(b)抵抗変化で発振周波数が変化する有機リング発振回路、(c)有機ダイオードによる静電気保護回路 (出所:東京大学)

有機集積回路は主に3つのブロックから構成されている。第1のブロックは、有機ダイオードを用いた整流回路で、電磁界共鳴によりワイヤレスで電力を受ける(図3a)。この整流回路で使われている有機ダイオードは、無線タグで広く使われている周波数13.56MHz帯において、低駆動電圧(10V以下)で大電流(20mA)を流すことができる。

第2のブロックは、抵抗変化で発振周波数が変化する有機リング発振回路で、水分による抵抗の変化をワイヤレスにデータ転送する(図3b)。今回のシステムは、ワイヤレスセンサの受信コイルが曲がっても最適な通信条件でデータを読み出すことができるように、送信電圧を調整できる仕組みを持っている(図2)。これによって、ワイヤレスセンサからのデータを読み出す送信機の送信電圧を最大92%削減できるようになり、消費電力の削減を実現した。

第3のブロックは、有機ダイオードを用いた静電気保護回路(図3c)で、生体とフレキシブルセンサが接触した際に発生する静電気によるデバイスの破壊を防ぐ。2kVの静電気でも壊れない耐性を実現した。今回開発された有機ダイオードは、有機トランジスタの駆動電圧である8V以下の電圧で、大電流(10mA以上)を流すことができる。有機半導体を使った静電気保護回路に関する研究はこれまでにもあったが、世界標準試験規格に準拠したレベルでの性能(IEC61000-4-2のレベル1相当)が示されたのは、世界で初めてであるという。

今回の実験ではセンサによる水分検出を実証したが、抵抗変化に変換できる情報であれば同じ原理で検出できるため、温度や圧力といった様々な種類のセンサにも同技術を応用できる。これらを複合化して、多点で計測できるフレキシブル大面積ワイヤレスセンサへの展開が期待される。

今後の課題としては、信頼性の向上と低消費電力化が挙げられている。信頼性については、静電気保護回路有機ダイオードの材料や構造を検討することによって、さらなる高耐圧化を進めていく。また、整流回路の有機ダイオードの駆動電圧を低減することによって、さらなる低消費電力化が可能であるとしている。


発表資料

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