JAEA、海水中のリチウム資源を回収する元素分離技術を確立

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日本原子力研究開発機構(JAEA)核融合研究開発部門増殖機能材料開発グループの星野毅研究副主幹らが、イオン伝導体をリチウム分離膜として用い、海水からリチウムを分離する元素分離技術を開発した。分離プロセスに伴うイオンの移動を利用して発電を行なうことができるため、リチウム分離過程で電気などの外部エネルギーを消費しなくて済むという。

海水中のリチウム資源を回収する元素分離技術(出所:JAEA)

海水とリチウムを含まない回収溶液間は、イオン伝導体をリチウム分離膜として用いて隔離する。溶液間にリチウム濃度差を生じさせることにより、海水中のリチウムが自然に回収溶液へ選択的に移動する。イオン伝導体中をリチウムイオンが移動するときに電子が発生するため、この電子を電極で捕獲することで発電しながらリチウムを回収できる。発電した電気エネルギーをリチウム回収に使用することで、資源回収のゼロエミッション化が可能になるとみられる。

イオン伝導体としては、NASICON型結晶構造のセラミックスをリチウム分離膜として使用した。同材料は、発火性が低く、充電量の大きい次世代リチウムイオン電池材料としても期待されている。

海水からのリチウム回収試験の様子(出所:JAEA)

リチウム回収液から沈殿反応によって炭酸リチウム粉末を精製(出所:JAEA)

内閣府の最先端・次世代研究開発支援プログラムでは、実験室規模の限界を目指した装置のスケールアップを試みた。実際の海水を用い、3日間のリチウム回収試験を行ったところ、海水に含まれるリチウムを最大で約7%回収することに成功した。

海水の代わりに豆腐作りで使われる「にがり」(リチウム濃度は海水の約50~100倍)を用い、同様の試験条件でリチウム回収を行った場合も、海水と同等の回収性能が得られた。「にがり」からのリチウム資源回収は、使用済リチウムイオン電池からのリチウムリサイクル、海水の塩製造や淡水化処理時に廃棄している濃縮海水からのリチウムを含む各種の有用なミネラルの効率的回収などにも適用可能な技術であるという。

リチウムイオン電池の原料としては、主に炭酸リチウム(Li2CO3)が用いられるが、今回のリチウム分離技術におけるリチウム回収液は、希塩酸中に塩化リチウム(LiCl)が溶けた状態で存在する。Li2CO3を得るためには、まずリチウム回収液と安価な炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液を混合して、Li2CO3を沈殿させる。この沈殿物をろ過で回収し、乾燥することで、Li2CO3の粉末精製を行なうことができる。

リチウム分離過程で発生する水素ガス(+極)や塩素ガス(-極)は、様々な工業分野で産業用ガスとして使用されている。回収技術が未確立のボリビアなどの塩湖に多く含まれる硫酸リチウムからのリチウム回収にも適応が期待できるとしている。


発表資料

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