理研ら、光合成だけでバイオプラスチック生産。世界最高レベルの生産効率14%達成

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理化学研究所とマレーシア科学大学が、ラン藻に微生物の遺伝子を導入し、光合成だけで高効率にバイオプラスチックを生産することに成功した。ラン藻の乾燥重量の14%に当たるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成し、世界最高レベルの生産効率を達成した。太陽光によるクリーンで安全なバイオプラスチック生産プロセスが構築できると期待される。

ラン藻培養装置。CO2濃度、光強度、温度をコントロールできる (出所:理化学研究所)

理研環境資源科学研究センター バイオマス工学連携研究部門 合成ゲノミクス研究チームの松井南チームリーダー、マレーシア科学大学 生物学部 スーディッシュ・クマール教授らの共同研究グループによる成果。2014年1月22日付け PLOS ONE オンライン版に論文が掲載されている。

バイオプラスチックは生物由来のプラスチックであり、飲料容器や、車の内装、パソコンなどあらゆる用途に使われ始めている。微生物による分解性を備えた素材も開発され、石油由来のプラスチックにはない環境負荷低減効果が期待されている。PHAの生産では微生物が使われているが、培養にグルコースなどの糖が必要であり、特別な施設を作らなければならないため、生産コストが高くなるという問題がある。また、植物や光合成微生物によるバイオプラスチックの生産性は、使用する植物や微生物の乾燥重量の数%以下と非常に低く、生育遅延などの問題も報告されている。

今回開発されたPHA生産の代謝経路 (出所:理化学研究所)

研究グループは今回、ラン藻にPHAを生産させるため、PHA生産に必要な酵素をつくるphaAphaBphaC (カプリアビダス属由来)という3つの遺伝子を導入した。しかし、PHAはほとんど生産されなかった。

そこでphaA 遺伝子の代わりに、放線菌(Streptomyces sp. CL190)由来のnphT7 遺伝子を導入し、PHA生産の代謝経路を変えてみた。PhaAが可逆反応を起こす酵素であるのに対し、nphT7 遺伝子がつくる酵素NphT7は一方向の不可逆反応を起こす酵素のため、PHA生産の流れを強制的に起こすことができる。さらに、マレーシア科学大が単離したphaC (クロモバクテリア属由来)も導入し、生産効率の向上を目指した。

phaA 遺伝子の代わりにnphT7 遺伝子を導入したラン藻を、糖を含まない無機塩類の培養液で育成し、空気中のCO2を炭素源とした光合成を行った結果、ラン藻の乾燥重量の14%にあたるPHAを合成できた。この値は、光合成だけを使ったPHA生産の世界最高値になるという。さらに、炭素源として0.4%の酢酸を加えたところ、生産効率が向上し、世界最高レベルのラン藻乾燥重量の41%までPHAを生産させることができた。

ラン藻の細胞内に蓄積されたPHA。(左上)赤色は、ナイルレッドで染色されたPHAが存在することを示す。(右上)ラン藻の細胞。(左下)上の2つの画像を合わせ、PHAがラン藻の細胞内に蓄積されていることが分かる (撮影:環境資源科学研究センター豊岡公徳上級研究員、Ng Kiaw Kiaw国際プログラム・アソシエイト)

光合成によるバイオプラスチックの生産は太陽光だけで可能であり、高価な栄養源が不要。今回のラン藻による高効率のバイオプラスチック生産方法の開発によって、生産コストが大幅に低減され、製品を安価に提供できるようになると期待できる。ラン藻は、繁殖力が非常に大きい藻類であり、ゴムの主成分のイソプレン、バイオエタノールのイソブチルアルコールなどの化合物の生産も報告されている。今回報告された改変代謝経路は、これらの物質への生産力向上にも応用することが可能であるという。また、研究チームは、新しく導入した代謝経路による細胞全体の変化を調べるためにラン藻の全遺伝子の発現解析を行い、生産性向上のために必要な遺伝子候補を見いだしているという。


理研の発表資料

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