東北大学多元物質科学研究所の本間格教授、笘居高明助教らの研究グループが、安価な有機分子と炭素材料から成るメタルフリーの水系大容量電気化学キャパシタを開発した。パワー密度と大容量を単一デバイスで両立できるため、将来的にはスマートグリッド用大規模蓄電システムとしての利用が期待される。2014年1月7日付け Scientific Reports に論文が掲載されている。
通常、電気化学キャパシタは、鉛蓄電池と比較して容量が小さいことが欠点とされる。電気化学反応を併用して容量を大きくする試みもなされてきたが、多くの場合、金属酸化物が必要となり、コストや環境負荷の面で大規模蓄電システムに適合するものではなかった。
今回の研究では、パワー密度が高く安全な蓄電デバイスとして、有機分子を利用した大容量電気化学キャパシタを開発した。キノン系有機分子と、キノンにプロトンが付加したヒドロキノン系有機分子を対で電極材料に用いた。プロトンが両電極間を行き来することで充放電を行う。
使用した有機分子は、アントラキノンとテトラクロロヒドロキノンと呼ばれる物質で、水素、炭素、酸素、塩素の4つの軽元素のみで構成されているため、環境負荷が小さく、安価に作製することが可能。また、水溶液電解質で動作するため、リチウムイオン電池に使われている有機電解質のような発火の危険性がない。
これらの有機分子には導電性がなく、さらに電解液に溶け出してしまうため、これまで電極材料には不向きであるとされてきた。今回、導電性を持つ炭素材料内部のナノ空間に有機分子を閉じ込めることで、安定な充放電反応が可能となった。
鉛蓄電池に匹敵するエネルギー密度10~20Wh/kgを軽元素のみで実現できる。急速充放電試験では、鉛蓄電池では不可能な出力1000W/kg(数十秒での充放電)が可能なことが示された。また、アントラキノンに替えてジクロロアントラキノンを使うことでサイクル特性がさらに向上し、1万サイクルを超える安定な充放電を実現したという。
東北大学の発表資料
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