東大、2種類のイオンの移動を利用する「デュアルイオン電池」を開発

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

東京大学大学院工学系研究科の水野哲孝教授らの研究グループが、電極反応に2種類のイオンの移動を利用する「デュアルイオン電池」の開発に成功した。正極材料中を酸化物イオンが移動し、電解質中では負極材料に合わせたイオンが移動する。1つの正極材料で、リチウム、ナトリウムなど様々な負極と組み合わせて使用できる。希少元素を含まない安価な電池の実現が期待される。2013年12月17日付け Journal of the American Chemical Society オンライン版に論文が掲載されている。

新方式電池における理想的な反応(正極としてCaFeO3、負極としてNaを用いた場合)。放電過程において、正極ではCaFeO3がCaFeO2.5となり、引き抜かれた酸素と電解質中のナトリウムイオンが反応して、酸化ナトリウム(Na2O)が生成する (出所:東京大学)

研究チームは2012年に、正負極いずれもトポタクティック反応(出入りする原子以外の原子間の化学結合には組み替えが起こらない反応)で酸素が出入りするペロブスカイト型構造の鉄系酸化物を用いた酸素ロッキング電池を開発していたが、起電力が0.6V程度しかなくエネルギー密度が低いことが問題だった。

今回作製したデュアルイオン電池では、正極には酸素ロッキング電池と同様に固体内を酸素が移動する材料を用いた。一方、負極の材料としてリチウムやナトリウムなど低電位で充放電する金属を使用することで2.5~3Vの起電力が得られた。

CaFeO3正極の充放電時の電位変化。CaFeO3が放電後にCaFeO2.5となったことがわかる (出所:東京大学)

デュアルイオン電池はナトリウムイオン電解質、リチウムイオン電解質など、さまざまな電解質が利用可能なため、従来のリチウムイオン電池やナトリウム電池のように負極に適した正極材料の探索が必要なくなり、同一の正極材料に対してリチウムやナトリウムを負極として使用することが可能となる。また、正極材料として、希少金属を含まない化合物が利用可能であり、従来のリチウムイオン電池で使用されてきた高毒性かつ高価なコバルトを使用しなくて済む。

今回の研究では、正極として酸化鉄(IV)カルシウム(CaFeO3)、電解質としてNaClO4/トリエチレングリコールジメチルエーテル、負極として金属ナトリウム(Na)を用いたデュアルイオン電池で実際に電池の充放電動作を確認した。放電後の試料を調べたところ、正極のCaFeO3はCaFeO2.5となっていた。高分解能電子顕微鏡を用いた観察では、CaFeO2.5表面に数nmサイズの過酸化ナトリウム(Na2O2)が析出していることがわかった。

放電後の正極の高解像度透過電子顕微鏡像。表面に析出したNa2O2(点線で囲んだ部分)の様子が観察された。CaFeO2.5による縞模様(0.74nm間隔)も見られる (出所:東京大学)

CaFeO3からCaFeO2.5への反応は、Na2O2生成時には理論容量94mAh/gと予測され、実験によって実際に約90mAh/gの容量が確認された。これは実用リチウムイオン電池正極であるコバルト酸リチウムの容量(140mAh/g)の6割程度だが、CaFeO3の原材料コストがコバルト酸リチウムの数十分の1であるため、コスト当たりのエネルギー密度の大幅な向上が期待される。

また、電池反応によってNa2Oが生成する場合には、理論容量187mAh/gとなり、リチウムイオン電池正極のコバルト酸リチウム(140mAh/g)やリン酸鉄リチウム(170mAh/g)よりも高い容量が期待される。正極で出入りする酸素の量が電解質イオンと反応する酸素量となるので、今回の実証に用いたペロブスカイト型構造CaFeO3のように酸素を多く出すことのできる物質が大きな電池容量をもたらすことになるという。


東京大学の発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...