「世界のエネルギー消費分布はエントロピー最大化に向かいつつある・・・」JQIが分析

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共同量子研究所(JQI)の研究者 Victor Yakovenko 氏が、1980年代から2010年代までの国家間におけるエネルギー消費の分布状況を熱力学・統計力学的手法で分析している。それによると、全世界のエネルギー消費の分布は、最近になるにつれてエントロピー最大の状態に近づいているという。2013年12月16日付けのオープンアクセス誌 Entropy に論文が掲載されている。

図1 気体中の分子のエネルギー状態の分布を表したボルツマン-ギブス曲線 (出所:JQI)

Yakovenko 氏によると、国ごとの一人当たりエネルギー消費の分布は、気体中の分子のエネルギー状態の分布と同様に、指数関数の法則に従っている。気体分子の場合、あるエネルギー状態 E を持つ確率は、e-E/kTに比例して決まる(T は温度、k はボルツマン定数)。世界のエネルギー消費分布を考える場合には、温度 T を各国の一人当たりエネルギー消費の全世界平均値とする。図1は、気体中の分子のエネルギー状態の分布を表したボルツマン-ギブス曲線だが、国ごとの一人当たりエネルギー消費の分布も、これと非常に良く似た曲線を描くという。

図2 2010年における世界エネルギー消費の累積分布 (出所:JQI)

図2は、2010年のインド、中国、英国、フランス、ロシア、米国、アラブ首長国連邦(UAE)をはじめ世界200か国以上について、縦軸に世界人口比率(対数目盛)、横軸に一人当たりエネルギー消費をとったグラフである。データは米国エネルギー情報局(EIA)による統計値を使用している。仮に、データが完全に指数関数的であれば、各点はグラフ上に点線で示した斜めの直線上に載るが、実際のデータもほぼこの直線にフィッティングされることが分かる。

図3 世界エネルギー消費のローレンツ曲線 (出所:JQI)

図3は、EIAの統計を基に、1980年、1990年、2000年、2010年における世界エネルギー消費についてのローレンツ曲線をグラフ化したもの。グラフを斜めに二分している実線と各曲線で囲まれた部分の面積はジニ係数Gと呼ばれ、Gの値が分配の平等さを測る指標として用いられる。G=0に近いときは実データの曲線が斜めの直線に重なっており完全な平等を意味する。G=1に近いときは曲線が横軸に張りつき、右端で縦軸に沿って急激に立ち上がるため、グラフの右上に分配が集中した完全な不平等を意味する。

図3のグラフ中でG=0.5となる黒の実線は、分配が完全にばらけ、エントロピーが最大化した場合の曲線を表している。実データに基づくジニ係数は、1980年にはG=0.66、1990年にはG=0.64、2000年にはG=0.62、2010年にはG=0.55となっており、次第にエントロピー最大化するG=0.5へと向かっているようにみえる。図4は1980年以降のG値を時系列でプロットしたもので、やはり赤いS字曲線でフィッティングされるように今後はG=0.5に近づいていくことが予想される。

図4 世界エネルギー消費のジニ係数の推移 (出所:JQI)

Yakovenko 氏は、世界のエネルギー消費分布がエントロピー最大化に向かっていく理由として、貿易におけるグローバル化の拡大があると考えている。エントロピー最大の状態とは、高エネルギーから低エネルギーまで様々な状態が同時に存在するということであり、国家間のエネルギー消費にこれを当てはめれば、不平等さは緩和されていくものの完全な平等は実現されず、豊かな国もあれば貧しい国もあるという状態が今後も相変わらず続くであろうことを意味している。また、こうした指数関数的な分布では、世界人口の上位1/3が全生産エネルギーの2/3を消費し、下位の2/3の人が残りの1/3のエネルギーを消費するという「1/3の法則」が成り立つと同氏は指摘する。

ただし、Yakovenko 氏は、「上記のようなグラフが適用できるのは、有限な化石燃料を地球規模で再分配している世界であるから」とも指摘する。そして化石燃料の再分配から、全地表に降り注いでいる太陽光をはじめ地産地消の再生可能エネルギーへの切り替えが進めば、確率の法則はあてはまらなくなり、格差をさらに低下させることも可能になると考えられるとしている。


JQIの発表資料

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