名古屋大、気孔の開口を大きくして植物の生産量増加に成功

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名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の木下俊則教授とワン・イン研究員らが、気孔の開口を大きくすることで光合成と植物の生産量を増加させる技術を開発した。農作物やバイオ燃料用植物の生産量増加や、植物を利用したCO2削減への応用が期待される。2013年12月23日付けの米国科学アカデミー紀要(PNAS)オンライン版に論文が掲載されている。

図1 野生株とプロトンポンプ過剰発現株の光照射後の気孔開度の比較 (出所:名古屋大学)

気孔を開かせる原動力となる細胞膜プロトンポンプをシロイヌナズナの気孔でのみ増加させたところ、気孔の開口が25%ほど大きくなることを発見した。その結果、植物のCO2吸収量(光合成量)が約15%向上し、生産量が1.4~1.6倍増加することを明らかにした。

植物が光合成を行っているとき、多くのCO2を必要とするが、気孔の孔を通る際に生じる抵抗(気孔抵抗)がCO2取り込みの主要な制限要因となっており、植物の光合成が制限されていることが知られている。植物の光合成活性を向上させるためには、気孔の開き具合を大きくし、気孔抵抗を低下させればよいと考えられるが、これまで人為的に気孔の開口を大きくする技術は開発されていなかった。

図2 光による気孔開口の分子メカニズムモデル。太陽光に含まれる青色光がフォトトロピンに受容され、細胞膜プロトンポンプを活性化し、カリウム取り込みの駆動力を形成。細胞内に大量に取り込まれたカリウムが浸透圧を上昇させ、水が取り込まれ、孔辺細胞の体積が増加することで気孔が開口する (出所:名古屋大学)

気孔は、太陽光下で開口して光合成に必要なCO2を取り込む。先行研究により、この光による気孔開口には、青色光受容体フォトトロピン、気孔開口の駆動力を形成する細胞膜プロトンポンプ、内向き整流性カリウムチャネルなどの関与が明らかとなってきた。

今回の研究では、光による気孔開口反応に関わる主要因子(青色光受容体フォトトロピン、細胞膜プロトンポンプ、内向き整流性カリウムチャネル)を、気孔を構成する孔辺細胞のみで発現を誘導することが知られているGC1プロモーターを用いて、孔辺細胞だけに発現量を上昇させ気孔開口を促進させることができるかどうかを調べた。その結果、気孔開口の駆動力を形成する細胞膜プロトンポンプの孔辺細胞での発現量を増加させることで、光による気孔開口が通常よりも25%大きくなることを発見した。

図3 シロイヌナズナの野生株とプロトンポンプ過剰発現株の植物体の表現型の比較 (出所:名古屋大学)

プロトンポンプ過剰発現株は、野生株と比べて、ひと回り大きく育ち(図3A~C)、播種後25日目に地上部の生重量と乾燥重量が42~63%増加した。播種後45日目には、花茎が長くなり、多くの花をつけ、種子の収量が増加した。種子や莢を含む花茎の乾燥重量は、野生株と比べて36~41%増加していた。また、野生株と同様な乾燥応答や乾燥耐性が見られた。このことは、過剰発現株が野生株と同様の水分環境で生育可能であることを示している。一方、その他の因子の場合は、植物の生産量増加に直接結びつかないことが分かった。


発表資料

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