NIMS、グラフェンを風船のように膨らませて三次元構造化する新手法。高性能キャパシタなどに応用期待

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物質・材料研究機構(NIMS)が、単層または数層の超極薄グラフェンを張り子のように三次元的な骨格に貼り付けた構造体を創製することに世界で始めて成功した。吹き飴技法から着想を得た「ケミカル風船法」とも言うべき独特な方法であるという。

吹き飴技法に着想を得た新しいグラフェン三次元構造体の製造方法「ケミカル風船法」の模式図 (出所:NIMS)

NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の板東義雄フェロー、王学斌(ワン シュェビン)博士研究員、ゴルバーグ・デミトリ ユニット長らの研究グループによる成果。2013年12月16日付けの Nature Communications に論文が掲載されている。

グラフェンはその特異な物性のため、いろいろな応用が期待されている一方、極薄なため機能を発揮させるための三次元構造体を作ることが容易でない。これまでグラフェンの特性を損なわずに三次元構造体を作ることには成功していなかった。

左:三次元張り子構造を持ったグラフェン構造体の生成物(重さ70mg)の写真、右:グラフェン構造体の走査電子顕微鏡像とその三次元構造体モデル (出所:NIMS)

今回の研究では、これまで報告例のない吹き飴技法に着想を得た「ケミカル風船法」を用いて、三次元グラフェン構造体の合成に成功した。この構造体は構造的に安定な細い骨格にグラフェンを貼り付けた提灯や張り子を思わせる構造をしているという。ケミカル風船法には、原材料として極めて安価(0.3円/g)なグルコース(砂糖)を用いていること、生成効率が良くキログラムやトン単位での量産も容易であるといった特徴もある。

同手法では、グルコースと塩化アンモニウムを混ぜ、約250℃で加熱すると溶融したグルコースポリマーが生成する。この際に発生したアンモニアガスがポリマーを内側から圧力をかけることで膨らませ、数十ミクロンサイズの小さな風船を多数発生させる。同時に、構造体を安定化するための骨格が形成され、三次元張り子構造が形成される。張り子構造の形成後、さらに1350℃の高温で加熱することで、張り子の皮に相当する部分をグラフェンに変化させる。

できあがった構造体は、気泡が集まった構造をしており、その密度は3.0mg/cm3程度と極めて軽量。各気泡は多面体をしており、多面体の辺は3個ないし4個の気泡に共有されている。各辺はグラファイトで構成されており、十分な機械強度を持っている。多面体の面は極薄の単層もしくは数層のグラフェンから成っており、辺を形成するグラファイトで強固に支えられており、張り子のような構造を持っている。

合成された三次元張り子構造を持つグラフェン構造体を電極として用いたキャパシタは高い出力密度を示すことから、高性能なキャパシタ材料としてポータブル電子機器や電気自動車の急速充電・放電、航空機の電磁発射装置などへの応用が期待される。他にも、触媒担持体、吸着剤、水素吸蔵材料、ガスセンサ、ガスフィルタ、吸音材など現行のポーラスカーボンを置き換える新素材としての幅広い応用が考えられる。また、「ケミカル風船法」はグラフェン以外の超薄膜の新規な創製法としても広く利用することができるという。


NIMSの発表資料

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