IBM、プラスチックフィルムを用いて室温でのボース=アインシュタイン凝縮を実現

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

IBMの研究チームが、プラスチックフィルムを用いて、室温でボース=アインシュタイン凝縮を作り出すことに成功した。将来的には、巨大データ処理用エクサスケールコンピューティングシステムの構成要素となる高効率レーザーや超高速光スイッチといった新規オプトエレクトロニクスデバイスに応用可能な発見であるとしている。2013年12月8日付けの Nature Materials に論文が掲載されている。

今回の実験設定を表したイラスト (Credit: IBM Research)

ボース=アインシュタイン凝縮は、1920年代半ばに物理学者サティエンドラ・ボースとアルバート・アインシュタインが予言した量子力学的現象。ある温度以下で個々の粒子の物質波の波長(ド・ブロイ波長)が揃い、原子気体などの粒子系全体が巨大な波として振る舞うようになるため、通常はミクロな世界でしか見られない量子力学的効果を巨視的レベルで扱うことができるようになる。

絶対零度に近い極低温下では粒子のド・ブロイ波長が伸びるため、ボース=アインシュタイン凝縮のような量子効果が得られやすくなる。1995年には、コロラド大学の研究チームが、ルビジウムの原子気体を極低温に冷却することでボース=アインシュタイン凝縮を世界で初めて実験的に確認している。

さらに、励起子ポラリトンなどの準粒子を用いた系では、もっと高い温度でボース=アインシュタイン凝縮を作り出すこともできるため、近年活発に研究が進められている。室温下でのボース=アインシュタイン凝縮も可能だが、これまでは実験条件として誘電体マイクロ共振器中で成長させた超高品質の結晶材料が必要とされていた。

今回の研究の主な成果は、非結晶のプラスチックフィルム(発光ポリマー)を用いて励起子ポラリトンによる室温下でのボース=アインシュタイン凝縮が実現できることを示し、デバイス応用への可能性を広げた点にある。実験設定を簡素化できるため、ボース=アインシュタイン凝縮に関する学術研究の進展にも寄与するとみられる。

実験では、35nm厚のポリマー薄膜層を共振器としての2枚の鏡面の間に配置し、これをレーザー光で励起させた。鏡面間を行き来する光とポリマー材料との相互作用によって励起子ポラリトン(光子と電子-正孔対から構成されるボース粒子)が生成し、非線形挙動、青方偏移した発光、長距離コヒーレンスといったボース=アインシュタイン凝縮の証拠が観察されたという。

図は、実験設定を表したイラスト。種類の異なる透明酸化物の組み(赤と青)で構成された2枚の鏡面によって発光ポリマー層(黄)を挟んでいる。レーザー光(白)でポリマー層が励起されると、励起子ポラリトン(緑)が生成する。臨界密度に達すると励起子ポラリトンがボース=アインシュタイン凝縮し、上方の鏡面を通してレーザー状の緑色光が放射される。

今回確認された現象の持続時間は数ピコ秒(1ピコ秒=1兆分の1秒)という極わずかなものだが、研究チームは、光配線におけるレーザー状の光源や光スイッチなどを作製するためにボース粒子を利用することを考えれば、持続時間はこれでも十分に長いとしている。次の研究課題は、ボース=アインシュタイン凝縮にみられる特異な性質の研究およびその制御、アナログ量子シミュレータなどへの応用可能性の評価であるという。アナログ量子シミュレータは、超伝導などの複雑な現象のモデル化に効果を発揮すると期待されている。


IBMの発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...