東京工業大学 異種機能集積研究センターの大場隆之特任教授は、東京大学、大日本印刷、PEZY Computing、WOWアライアンスと共同で、40Vの低電圧で1cm2当たり140W冷却することができるチップ状の冷却装置(C3S:Closed-Channel Cooling System)の開発に成功した。米国ワシントンで2013年12月9日~11日に開かれる国際電子デバイス会議「IEDM2013」で成果報告が行われる。
同装置は、電気浸透流(EOF:Electro-Osmotic Flow)を利用して液体を循環し、冷却する仕組み。駆動ポンプを用いないことから、機械的故障がなく、100μmの厚さに収まる。マイクロプロセッサ(MPU)など発熱が大きい半導体の冷却や、小型電子機器への応用が期待される。
電気浸透流は、固液界面できた電気二重層に電圧をかけると、液体の荷電部分が動き、それに引かれて液体全体が流れ出す現象。これを用いたポンプをEOP(Electro-Osmotic Pump)と呼ぶ。
MPUなど大規模集積半導体では単位平方cm当たり100W以上の発熱があり、これを並べると一般的なホットプレートの発熱に匹敵する。うまく冷却できないと温度上昇で信頼性が低下し、また機能が劣化する。これまでは放熱板や外部からの強制冷却などが利用されてきたが、発熱が大きくなるにしたがい大型化し、冷却機構を後付するため、携帯性が悪く生産性が向上しなかった。機械的故障がない電気浸透流の原理を利用したポンプは、これまで1000Vといった高い電圧が利用され、これは半導体の電源電圧の100倍以上であり半導体応用の障害になっていた。
研究グループは今回、半導体微細化技術とウェハープロセスを応用することで電気浸透流の駆動能力を大幅に改善し、40Vで単位平方cm当たり140W放熱できることを実証した。シリコン基板の厚さをあらかじめ薄くし、上限配線にはシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)を用いた。ウェハー積層プロセスと組み合わせることで、冷却機能が搭載されたプロセッサを一貫したウェハープロセスで製造することが可能となり、低コスト化が実現できる。冷却機構を直接デバイスに搭載することができると、冷却装置は100μm以下の厚さとなり、小型化が進むモバイル携帯端末などにも応用可能であるという。
東京工業大学の発表資料
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