九州大、新規高酸素イオン伝導体NBTを発見。SOFCの低温作動化に期待

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九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)水素製造研究部門主任研究者/インペリアル・カレッジ・ロンドンの John A. Kilner 教授の研究グループが、新規高酸素イオン伝導体「Na0.5Bi0.5TiO3」を発見した。固体酸化物電解質燃料電池(SOFC)の低温作動化などへの応用が期待できる。2013年11月10日付けの Nature Materials に論文が掲載されている。

図1 NBTの結晶構造 (出所:九州大学)

SOFCの電解質としては、主にY2O3安定化ZrO2が使用されているが、酸素イオン伝導度が十分ではないことから、これに代わる新しい酸素イオン伝導体の開発が求められている。これまでの研究では、酸化セリウム(CeO2)や酸素イオン混合伝導体およびそれを用いた酸素透過膜(LaGaO3)などが代替材料の候補とされているが、希土類などの希少元素が使われているという問題がある。一方、Na0.5Bi0.5TiO3(NBT)は鉛(Pb)を含まない圧電体として実用化が期待されているが、製造プロセスによって電気的な抵抗が不規則になることが問題であり、圧電体や強磁性体として応用するには電気的性質の均一化が求められていた。

図2 NBTの酸素イオン伝導度の他の代表的な酸素イオン伝導体との比較 (出所:九州大学)

 

図3 NBT系酸化物のN2-O2セルで見積もった酸素イオン輸率の温度依存性 (出所:九州大学)

 
今回の研究では、NBTの課題であった製造プロセスによる電気的性質の変化の原因が、作製時に生じた蒼鉛(Bi)欠損と酸素(O)欠陥による酸素イオン伝導の影響であることを発見した。マグネシウム(Mg)をチタン(Ti)サイトに添加することで、600℃で0.01S/cmという大きな酸素イオン伝導を示すことが分かったため、NBTが新しい酸素イオン伝導体として応用できることが明らかになった。

NBTのペロブスカイト型の結晶構造を図1に示す。結晶格子は、大きいイオンサイズの A サイトイオンと、小さい B サイトイオンから構成される化合物であり、同じ構造の酸化物としては、LaGaO3系酸化物が酸素イオン伝導性を有することで知られている。

今回、NBTが、さらに優れた酸素イオン伝導度を有する化合物であることが示された。図2は、NBTの伝導度を他の代表的な酸素イオン伝導性を有する酸化物と比較した結果を示している。Biの欠損とTiサイトへのMg添加により、酸素イオン伝導性が向上し、400℃以下の低温においてLaGaO3系酸化物より、数倍大きな酸素イオン伝導性を発現することを見出した。NBTにおける酸素イオン輸率(酸素イオンが電荷を運ぶ割合)をN2-O2ガス濃淡電池セルの起電力から測定したところ、図3に示すように0.9以上のイオン輸率を示し、新規な酸素イオン伝導体であることが分かった。安価なTiやNaからなる酸素イオン伝導体はこれまで報告がないという。

今回開発された材料はNa、Bi、Tiという比較的安価な元素から構成されていることから、電解質の低価格化が進むと期待される。従来材料に比べて酸素イオン伝導度も高く、特に低温での伝導度が高いことから、低温作動型SOFCの研究にも大きな影響を与えると考えられる。


PDF形式の発表資料

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