MIT、体内に1年以上埋め込んで一酸化窒素モニタリングできるCNTセンサを開発

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マサチューセッツ工科大学の研究チームが、カーボンナノチューブ(CNT)を用いて、1年以上の長期間に渡って生体内に埋め込むことができる分子センサを開発した。生体機能にとって重要な役割を果たしている一酸化窒素(NO)やグルコースなどの分子の研究が進むと期待される。2013年11月3日付けの Nature Nanotechnology に論文が掲載されている。

ヒドロゲル内に封入したCNT。皮膚下に長期間埋め込むことができる (PHOTO: BRYCE VICKMARK)

NOは、脳内の情報伝達を担ったり、免疫機能の調整に関わっているとされる。多くの癌細胞においてはNOのレベルが不安定になるが、実際に細胞中でNOがどのような挙動をしているかはほとんど解明されていない。今回のCNTセンサは、生体内でのNOの役割を長期的に研究する新しいツールとして開発されたという。

研究リーダーであるMIT化学工学教授 Michael Strano 氏のラボでは、これまでにも過酸化水素や神経ガスのサリンなど様々な分子を検出するためのCNTセンサを開発している。これらのセンサでは、標的物質と結びついた一分子がCNTと結合することによって発する蛍光が利用されている。

同チームの先行研究から、特定の配列を持ったDNAでCNTを包むことで、CNTによるNO検出が可能なことが分かっていた。今回の研究では、CNTを修飾することによって、2種類の異なるセンサを作製した。1つは、血流内に注入して短期間のモニタリングに使用するタイプ。もう1つは、センサをゲル内に組み込み、皮膚下へ長期間埋め込み可能にしたタイプであるという。

血流注入型センサでは、CNTに生体適合性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)を添付することにより、血流内での粒子の凝集を防ぐ。PEG添付CNTをマウスの血流に注入する実験では、マウスに損傷を与えることなく粒子が肺と心臓の間を行き来できることが確認された。ほとんどの粒子は肝臓に集まるため、炎症反応によって生成されるNOのモニタリングに利用することができる。

長期埋め込み型センサでは、アルギン酸塩を原料とするゲル内にCNTを組み込む。このゲルをマウスの皮膚下に埋め込んだところ、ゲルは同じ位置に400日間とどまって機能し続けた。研究チームによれば、さらに長期に渡って埋め込むことも可能であるという。こうした長期埋め込み型センサは、癌やその他の炎症性疾患のモニタリングに使用することができると考えられる。また、人工股関節や、その他の体内埋め込み器具を使用している患者における免疫反応の検出にも利用できる可能性があるという。

研究チームは、別種の分子でCNTをくるむことによって、同技術を糖尿病患者のグルコース検出に利用する研究にも取り組んでいる。今日ほとんどの糖尿病患者は一日に何度も指に注射針を刺して血中のグルコース濃度を記録しなければならない。皮膚に装着するタイプの電気化学式グルコースセンサもあるが、これは長くても1週間程度しか使い続けられず、皮膚に電極を貫通させるため感染症のリスクを伴う。

また、電気化学センサは、現在研究されている閉ループモニタリングシステムに組み込んで使用するには精度が足りないとされる。閉ループモニタリングシステムは、グルコースのリアルタイムモニタリングが可能なセンサとインシュリンポンプを接続したもので、実現すれば患者自身による注射やインシュリン注入の必要がなくなる。システムの完成には高精度かつ安定性の高いセンサが必要であり、CNTセンサがこの用途に向いていると考えられている。


MITの発表資料

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