阪大、光合成の中核を担う「歪んだ椅子」の構造解明に成功。人工光合成の開発加速に期待

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

大阪大学理学研究科の石北央教授と斉藤圭亮助教の研究グループが、植物の光合成の中核を担う「歪んだ椅子」と呼ばれる触媒部位の構造解明に成功した。これまで「歪んだ椅子」の構造解明が進まないことが、効率的な人工光合成系の開発の障害になっていた。2013年10月2日に Biochimica et Biophysica Acta オンライン版で論文が公開された。

図1 左:光合成で水分解・酸素発生反応を行うPSIIタンパク質全体像。右:タンパク質内に埋め込まれた触媒部位Mn4CaO5錯体および周辺の酸化還元活性部位 (出所:大阪大学)

高等植物や藻類の光合成では、太陽エネルギーを利用して水を酸素と水素イオンに分解する。この反応を行う光合成タンパク質Photosystem II(PSII)中に埋め込まれた天然の触媒部位n4CaO5錯体は、錯体を構成するマンガン(Mn)と酸素(O)間の結合が数か所で伸びており、「歪んだ椅子」型構造をとっている。

同研究グループは、PSIIタンパク質分子に対して、今年のノーベル化学賞受賞対象となった量子化学計算手法「QM/MM法」を行うことにより、歪みの直接の原因が「椅子」の「台座」部位に存在するCaではなく、そこから離れた「背もたれ」部位に1つだけ存在するMnであることを明らかにした。歪みの原因はCaが1つだけ含まれていることによると考えられていた定説を覆した。

図2 PSIIタンパク質中のMn4CaO5錯体の「歪んだ椅子」構造 (出所:大阪大学)

 
Mn錯体分子のうち、すべてのMn-O結合距離がそろった対称性構造をもつ錯体分子では水分解活性がほとんどないが、いくつかの伸びたMn-O結合を持つ歪んだ構造の錯体分子では水分解活性があることが知られている。このため、伸びたMn-O結合に起因する歪みの存在は水分解活性の有無を決める重要な要因といえる。PSIIの水分解反応ではCaを取り除くと水分解反応が途中で止まってしまうこともあり、これまでCaが歪みの原因と考えられていた。

図3 金属イオン除去によるMn4CaO5構造の変化(Ca:緑、Mn:紫、O:赤)。Caを除去してもMn1と隣接するOとの結合距離は伸びたままだが、「歪んだ椅子」の「背もたれ」部位に存在するMn4を除去すると一般的な結合の長さに戻り、構造の歪みは解消する (出所:大阪大学)

 
しかし、PSIIタンパク質中でCaを外した錯体の構造について量子化学計算を行ったところ、PSII内の伸びたMn-O結合はほとんど変化しなかった。一方、「歪んだ椅子」の「背もたれ」部位に1個だけ位置するMn(Mn4)を除去すると、伸びていたMn-O結合は、通常の結合距離へ戻った。このことから、PSIIのn4CaO5錯体に見られる伸びたMn-O結合(歪み)の原因は、「背もたれ」部位に1個だけ位置するMnであることが初めて実証された。

水分解活性の鍵である歪みの原因が特定されたことにより、今後は水素生成をめざした人工光合成系の開発が加速することが期待される。


発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...