EPFL、温度差から磁場が生じる「磁気ゼーベック効果」を実証

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スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが、絶縁体の温度差から磁場が生じる「磁気ゼーベック効果」の証拠を実験的に確かめた。導体の温度差から電流が生じるゼーベック効果に似た現象だが、これまで存在が確認されていなかった。磁気トンネル効果トランジスタなど、スピントロニクスデバイスの開発にも応用できる可能性があるという。2013年8月22日付けの Physical Review Letters に論文が掲載されている。

図1 YIG薄板における磁化伝播の時間変化を測定する実験 (Sylvain D. Brechet et al., Physical Review Letters (2013) doi:10.1103/PhysRevLett.111.087205)

通常のゼーベック効果では、導体の温度勾配の高温側から低温側に向かって電子の流れが生じる。これは、高温側のほうが低温側より電子の運動エネルギーが高くなるため、高温側から低温側に向かって電子が拡散していく現象として説明できる。

絶縁体の場合、温度勾配があっても当然電流は流れないが、温度勾配は電子のもう1つの特性であるスピンに影響を及ぼす。絶縁体中では温度勾配によって電子のスピンの方向が変わる。一定の条件下では、これによって温度勾配の方向に垂直な磁場が生じる。電気のゼーベック効果と同様に、磁気ゼーベック効果による磁場の強度も絶縁体中の温度勾配に直接比例する。

研究チームは、磁気ゼーベック効果を確認するために、絶縁体であるイットリウム鉄ガーネット(YIG)中における磁化の伝播を検証した。図1のような設定でYIGの薄板に高周波パルスを与えて磁化伝播の時間変化を測定する実験を行ったところ、絶縁体中を伝播する磁気の波(スピン波)の方向と温度勾配との関係が、磁気減衰の程度に影響を与えることが示された。このことが、磁気ゼーベック効果が存在する証拠になるという。

図2 スピン波の伝播方向と温度勾配との関係が磁気減衰に与える影響 (Sylvain D. Brechet et al., Physical Review Letters (2013) doi:10.1103/PhysRevLett.111.087205)

 

図3 15ナノ秒の高周波パルス励起(4.36GHz)によってYIG中に生じた信号強度の時間変化の測定結果 (Sylvain D. Brechet et al., Physical Review Letters (2013) doi:10.1103/PhysRevLett.111.087205)

 
具体的には、スピン波の方向がYIG中の温度勾配の方向と一致する場合には磁気減衰が減少し、スピン波と温度勾配が逆方向になる場合には磁気減衰が増大した。図2の円錐形の大きさが磁気減衰の程度を表している。15ナノ秒の高周波パルス励起(4.36GHz)によってYIG中に生じた信号を検出する実験では、低温側から高温側に向かって伝播したスピン波のほうが、高温側から低温側に向かって伝播したスピン波に比べて、明らかに磁気減衰の度合いが小さかった。図3は測定結果のデータで、低温側から高温側に伝播する信号のほうが、強い信号強度(図の明るい領域)が長時間持続していることがわかる。


EPFLの発表資料

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