東大ら、マルチフェロイック材料の電磁気構造を原子分解能で評価する技術。新規圧電材料の開発に応用期待

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東京大学の幾原雄一教授、柴田直哉准教授、松元隆夫特任研究員らのグループが、物質・材料研究機構(NIMS)および豪州ウーロンゴン大学と共同で、球面収差補正走査透過型電子顕微鏡を用いて、マルチフェロイック材料の強誘電性ドメインをサブオングストローム(0.1nm以下)の空間分解能で精密に評価する技術を確立した。材料の原子構造だけでなく、電磁気構造に関しても原子分解能で直接評価することが可能になる。新規圧電材料の開発に不可欠な評価技術としても役立つことが期待される。2013年10月9日発行の Nano Letters に論文が掲載されている。

図1 球面収差補正走査透過型電子顕微鏡の模式図 (出所:東京大学)

強誘電性と磁気的性質を併せ持つマルチフェロイック材料は、原子スケールでの電磁気構造がその特性と密接に関係していると考えられているが、これまでその電磁気構造の詳細は不明だった。研究グループは今回、超高分解能走査透過型電子顕微鏡と統計的画像処理法を駆使し、強誘電性の本質である原子の変位を直接観察することで、マルチフェロイック材料の特性に大きく寄与する強誘電性ドメインをサブオングストロームの空間分解能で可視化することに成功した。

図1は、観察に用いた球面収差補正走査透過型電子顕微鏡の模式図。試料により散乱された電子線の検出角度を調整することによって種々の情報が得られ、特に内側の環状領域を使用した像(ABF-STEM像)では酸素、リチウム、水素などの軽元素も可視化できる。外側の環状領域を使用した像は、HAADF-STEM像と呼ばれる。

図2 六方晶YMnO3単結晶薄膜中の強誘電性分極構造を超高分解能走査透過電子顕微鏡により観察し、統計的画像処理により求めた平均像 (出所:東京大学)

 
図2は、六方晶YMnO3(Y:イットリウム、Mn:マンガン、O:酸素)単結晶薄膜中の強誘電性ドメインを観察した像である(上:ABF-STEM像、下:HAADF-STEM像)。上側のイットリウム原子層において0.48オングストローム、下側のマンガン酸素原子層において0.16オングストロームの微小な変位が鮮明に観察されている様子が分かる。同材料の磁気電気的効果に密接に関連すると考えられているマンガン酸素原子層においてもイットリウム原子層における原子変位と相関した変位があることが初めて明らかになった。

図3 2つの異なるドメインウォールにおける電気分極の観察例。いずれのドメインウォールにおいても原子スケールで急峻に分極方向が変化していることが確認された (出所:東京大学)

 
また、分極方向が180°異なる2種類の強誘電性ドメイン間の界面(ドメインウォール)を定量的に評価したところ、図3に示すように、いずれの界面においても電気的分極が原子スケールで急峻に遷移していることが明らかになった。図3左:LDWはドメインウォールが横に並び、右:TDWはドメインウォールが縦に並んだ状態。赤色は上向きの分極、水色は下向きの分極を示している。従来の強誘電性材料では通常、縞状のドメインが観察され、そのドメインウォールは直線に近いものが多いことが知られている。一方、今回の材料の強誘電性ドメインは独特な形状をしており、自由な曲線状のドメインウォールとなっていることが透過型電子顕微鏡による暗視野像観察で知られていた。今回の観察において、原子スケールで急峻な2種類のドメインウォールの組み合わせによって、自由な曲線状のドメインが形成されていることが明らかになった。


東京大学の発表資料

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