マサチューセッツ工科大学(MIT)とシンガポールの南洋理工大学の研究チームが、形状記憶性能のあるセラミック材料を開発した。マイクロアクチュエータなどのデバイスへの応用が期待される。2013年9月27日付けの Science に論文が掲載されている。
変形しても温度変化によって元の形に戻る形状記憶材料は1950年代から知られているが、それらは金属や高分子材料であり、セラミックに形状記憶性能を持たせた例はこれまでなかった。セラミックの分子構造も原理的には形状記憶が可能なはずだが、セラミック特有の脆さや割れ易さといった性質があるため、実際にはセラミックを曲げて変形させることができなかった。
研究チームは今回、微細な構造全体が1個の結晶粒によって構成されているセラミックの微小材料を作製した。微小化することで材料の強度を上げ、割れの起点となりやすい結晶粒界を取り除くことによって、割れ耐性を向上させた「曲がるセラミック」を実現した。
実験では、直径1μmのセラミック繊維において、7~8%の曲げが可能であることが確認された。通常のセラミック繊維では、1%程度の曲げで割れてしまうという。また、変形復元サイクルを50回繰り返しても耐えられることも確認された。
形状記憶セラミックの応用分野としては、マイクロアクチュエータなどのデバイスが考えられる。駆動部にセラミックを用いることで、既存の材料と比べて高出力かつ高温動作可能なマイクロアクチュエータが実現できる。今回はセラミック材料としてジルコニアが用いられているが、他のセラミック材料も同様の手法でフレキシブル化が可能であるという。セラミックの強度と金属の柔軟性を合わせ持った新材料として注目される。
発表資料
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