「供給過剰の風力エネルギーを二次電池で貯めるのは不合理」スタンフォード大が報告

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スタンフォード大学「世界気候およびエネルギー・プロジェクト(GCEP)」の研究チームが、太陽光発電と風力発電のエネルギー貯蔵コストに関する研究をまとめている。系統接続された再生可能エネルギーによる電力供給が電力需要を上回る場合の対応として、供給過剰分のエネルギーを蓄電設備に貯蔵して後で使うケースと、発電を停止して出力抑制するケースがあるが、特に風力発電では出力抑制によって過剰分を切り捨ててしまったほうが合理的であるとしている。2013年8月28日付けの Energy and Environmental Science に論文が掲載されている。

蓄電技術ごとのEROI値の変化。凡例中、PHS は揚水発電、CAES は圧縮空気蓄電 (Charles J. Barnhart et al., Energy and Environmental Science (2013) doi:10.1039/C3EE41973H)

太陽光や風力発電は天候などの条件によって発電量が変動するため、電力需要の低い時に需要を上回る量の電気が作られる場合がある。系統電力網に接続されている場合、こうした電力の出力超過を放置すると系統側の発電機の負荷が減って交流電力の周波数上昇を招き、停電の原因になるなど悪影響が生じる。こうした事態を避けるための対応として、二次電池などの蓄電設備に電気を貯めておく、あるいは出力抑制をかけるといった方法が考えられるが、どのような方法を取るかによってエネルギーコストは異なってくる。

今回の研究では、エネルギー投資利益率(EROI: energy return on investment)という概念を用いて、太陽光および風力発電からの出力超過対策コストについて評価した。EROIとは、ある発電技術によって生産されるエネルギー量を、その技術の製造・維持にかかるエネルギー量で割った値を意味する。蓄電設備としては、5種類の二次電池(鉛蓄電池、リチウムイオン電池、NAS電池、バナジウム系レドックスフロー電池、亜鉛臭素電池)および圧縮空気蓄電と揚水発電を検討対象とした。

太陽光発電の場合、シリコンその他の部材の加工製造に大量のエネルギーが投入されている。それに比べて、風力発電の製造に必要とされるエネルギー量はずっと小さい。このため、風力発電のEROIは太陽光発電のEROIと比べて1桁以上大きくなる(論文では、太陽発電のEROI=8に対して風力発電のEROI=86として計算している)。

太陽光発電では、製造時にかかるエネルギー量が大きいため、同様に製造時のエネルギー量が大きい二次電池を電力貯蔵に用いてもコスト的に釣り合いが取れる。しかし、小さなエネルギー量で製造できる風力発電では、事情が違ってくると研究チームは指摘する。例えば、10ドルの時計を保管するために100ドルの金庫を買う人はいない。同様に、エネルギー的に安価な風力発電のためにエネルギー的に高価な二次電池を製造するのは合理的ではない、というように説明できる。

今回の研究では、風力発電を出力抑制するとEROIは10%低下するが、リチウムイオン電池を用いて超過分の電力を貯蔵した場合にはEROIが20%程度低下することが分かった。鉛蓄電池では50%以上も低下するという。

図は、太陽光および風力発電に関して、蓄電技術ごとのEROI値の変化をグラフ化したもの。グラフを斜めに2分割している黒い実線 EROIcurtailment よりも上の領域では、出力抑制するより蓄電したほうがエネルギー回収が良くなる。一方、EROIcurtailment よりも下の領域では、蓄電設備を設置することによって単純な出力抑制よりもエネルギーコストがかかるようになる。なお、二次電池と比較すると、揚水発電による電力貯蔵は非常に経済的であり、EROIは10倍程度高くなる。ただし、揚水発電所の設置は、地勢的・環境的な制約が大きいという問題がある。


スタンフォード大学の発表資料

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