東工大、C12A7エレクトライド表面で二酸化炭素が室温で分解されることを発見

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東京工業大学の細野秀雄教授、戸田喜丈特任助教らのグループは、ロンドン大学と共同で、石灰とアルミナから構成される化合物 12CaO・7Al2O3(C12A7)の構造中に電子を取り込んだC12A7エレクトライドが、二酸化炭素の分子を室温で選択的に吸着・分解することを見出した。C12A7エレクトライドは、電子を外部に極めて与えやすい性質を持ちながらも化学的に安定という、一般的には相容れない性質を併せ持っており、今回の発見もこの特異な物性に起因しているという。2013年8月29日付けの Nature Communications に論文が掲載されている。

図1 ナノサイズのカゴから構成されたC12A7の結晶構造。カゴの内部には酸素イオン(青)が入っている。C12A7エレクトライドでは、カゴの内部に酸素イオンの代わりに電子(緑)が入る (出所:東京工業大学)

C12A7はアルミナセメントの構成成分の一つであり、内径0.4nm程度の籠状の骨格が面を共有して繋がった構造をしている(図1)。この籠には1/6の割合で酸素イオンが含まれているが、同研究グループは2003年に籠中の酸素イオンをすべて電子に交換できることを発見した。籠中の酸素イオンをすべて電子で交換したC12A7エレクトライドは金属のように電気をよく流し、電子を外部に極めて与えやすい性質を持ちながら化学的にも熱的にも安定で容易に取り扱うことができる。

図2 C12A7エレクトライドにいろいろなガスを暴露した際の暴露量と吸着量の関係。少ない暴露量にも関わらず、二酸化炭素が他のガス種よりも選択的に多く吸着することが確認できる (出所:東京工業大学)

 
今回、このC12A7エレクトライドを酸素、窒素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素雰囲気にそれぞれ室温で暴露すると、二酸化炭素の吸着量がその他の気体の場合と比較して短い暴露量で飽和量に達することが分かった(図2)。C12A7エレクトライドが二酸化炭素を選択的に吸着していることを意味している。

図3 二酸化炭素を飽和量吸着させたC12A7エレクトライドを加熱した際の脱離する物質。一酸化炭素が主であることが確認できる (出所:東京工業大学)

 
また、二酸化炭素を飽和量吸着させたC12A7エレクトライドを加熱し、脱離してきた化学種を調べた結果、二酸化炭素を吸着させたにも関わらず、脱離してくる主要な化学種が一酸化炭素であることが分かった(図3)。このことから、C12A7エレクトライドに吸着した二酸化炭素は一酸化炭素に分解するということが示された。

図4 第一原理計算によるC12A7エレクトライド上での二酸化炭素分解のメカニズム。C12A7エレクトライドの表面で二酸化炭素の分子に電子が供給され、一酸化炭素と酸素に分解する (出所:東京工業大学)

 
ここでの二酸化炭素の分解による一酸化炭素の脱離開始温度は200℃以下と比較的低温であることから、二酸化炭素はC12A7エレクトライド表面に吸着した直後に一酸化炭素と酸素に分解していることが示唆される。第一原理計算の結果からは、C12A7エレクトライド表面では二酸化炭素分子はそのまま吸着するよりも一酸化炭素と酸素に分解して吸着する方がエネルギー的に安定であることが示された(図4)。

今回の成果から、カルシウム、アルミニウム、酸素といった地球の表面付近に豊富に存在する元素からなる安価な化合物C12A7エレクトライドのみを使用し、二酸化炭素を分解し、一酸化炭素を得られることが分かった。C12A7エレクトライドは二酸化炭素を選択的に吸着することから、排ガスなどに含まれる二酸化炭素の除去などへの応用も期待できる。

実用化をめざす上での問題点は、二酸化炭素を分解した際に生成する酸素が、一酸化炭素と比較してC12A7エレクトライド表面に残りやすいこと。酸素を消費する別の化学反応と組み合わせてC12A7エレクトライド表面に残った酸素を取り除くことが可能になれば、触媒的な二酸化炭素の分解が実現すると期待される。


東京工業大学の発表資料

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