東工大、水溶液系ナトリウム-空気電池を試作。リチウムイオン電池の10倍以上と高い放電容量

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東京工業大学応用セラミックス研究所セキュアマテリアル研究センターの林克郎准教授らが、ナトリウム‐空気電池を試作し、放電容量などの特性がリチウムイオン電池の10倍以上であることを確認した。内燃機関並みの航続距離の電気自動車実現につながる成果であるとする。いまのところ繰り返し充放電できない一次電池だが、今後は二次電池化と性能向上を目指す。2013年7月3日付けの Journal of The Electrochemical Society に論文が掲載されている。

水溶液系ナトリウム-空気電池の構造と特徴 (出所:東京工業大学)

高い反応性を持つ金属ナトリウムを化学的に安定なセラミックス・セパレータで保護し、陰極側の水性電解質に放電生成物を溶解させることで、放電生成物の堆積による放電停止を避け、高い放電容量を実現した。具体的にはナシコンと呼ばれる高速ナトリウムイオン伝導性セラミックスを挟んで、金属ナトリウム陽極と有機電解液および空気極と水溶液電解液を分割する構造を用いることで、約 600 mAh/gの放電容量と 10 mW/cm2の出力を得た。

ナシコン・セラミックスは金属ナトリウムや強アルカリ性の水性電解質に対しても化学的に安定であり、室温から50°Cの温度範囲で1~2 × 10-2 S・cm-1 の高いイオン伝導度を有することからナトリウム‐空気電池に有効な材料であるという。今回のナトリウム-空気電池では、リチウムを用いた同様の構造の水溶液系リチウム-空気電池で課題となっていたセラミックス・セパレータの腐食、相対的に低いイオン伝導度といった問題が解決・改善されている。

水溶液系ナトリウム-空気電池の放電特性。実線が電流と電圧の関係、 点線がその際の出力を表わす (出所:東京工業大学)

 
放電特性を評価したところ、起電力が2.9Vであり、ナトリウムおよび水溶液の活物質重量当たりの電気化学容量が約 600 mAh/g、エネルギー密度が約 1500 Wh/kgであった。この値には、電極や固体電解質セパレータその他の構成材、システム部材などの重量を含まないものの、実用リチウムイオン電池の10倍以上の値であり、大きなマージンを有している。出力密度については電池の各部位の改善で容易に出力の向上がみられ、約 10 mW/cm2とリチウム-空気電池などと比較しても優れた値が報告されている。しかし、電池構成が比較的複雑であることから、実用化に向けては面積当たりの出力を 100 mW/cm2 程度に向上することが望まれる。

電気自動車の航続距離をガソリン車並みに引き上げるためには、現状の3~10倍程度のエネルギー密度を有する電池が必要とされる。既存のリチウムイオン電池の改良では実現が難しいため、金属と空気中の酸素を反応させることで電力を取り出す金属-空気電池が注目されている。金属-空気電池の一種であるリチウム-空気電池は、理論的に極めて大きいエネルギー密度が得られることが分かっているが、放電生成物が陰極に目詰まりすることで放電が停止し、本来のエネルギー密度を発揮できないことなどが課題となっている。

ナトリウム-空気電池で用いられるナトリウムは、標準電位がリチウムより小さく質量も重いため、陽極活物質として原理的に不利ではあるが、豊富な資源であることに加え、活物質のほか、集電材、電解液などにも安価な材料が適用可能であることが分かり、注目されている。


PDF形式の発表資料

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