東北大、ウイルス由来のペプチドでナノロボットを作製。高効率・低副作用のDDSに応用期待

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東北大学病院の鈴木康弘講師らの研究グループが、ウイルス由来のペプチドでナノロボットを作製した。様々な性質のナノ粒子、高分子化合物、高分子薬物をナノロボット化して細胞内に侵入させることが可能になるという。ドラッグデリバリーシステムなどナノ粒子を用いた医療技術への応用が期待される。2013年6月3日付けの Molecular and cellular biology オンライン版に論文が掲載されている。

蛋白導入ドメインとナノ粒子 (出所:東北大学)

研究グループは今回、蛋白導入ドメインという分子に注目して研究を行った。蛋白導入ドメインはヒトを含む様々な生体内タンパクに認められる 10~20 アミノ酸配列で、それを様々な高分子化合物に結合させることで細胞内に導入させることができる。しかし、細胞内への分子の侵入機序や、細胞内導入効率を上げる方法については、これまでよく分かっていなかった。

そこで、HIV-1 ウイルス由来の蛋白導入ドメインを結合させた蛍光ナノ粒子(量子ドット)の細胞上での運動を詳細に顕微鏡観察し、その細胞内侵入機序を調べた。その結果、蛍光ナノ粒子上に HIV-1 ウイルス由来の長さ 11 アミノ酸の蛋白導入ドメインペプチド 8 個を固層化するとナノ粒子が生細胞の表面上で局所刺激を引き起こし、方向性を持って運動する能力を獲得することが明らかになった。さらに、このナノ粒子がエンドサイトーシス(細胞表面から膜が細い管状に細胞内に落ち込んで、その管の首の部分がくびれることによって細胞表面に吸着した分子を細胞内に取り込む現象)を誘導し、細胞表面から細胞内に侵入していく能力を獲得したことが明らかになった。

このことから、多数の蛋白導入ドメインペプチドを固層化すると、個々のナノ粒子が局所刺激を引き起こして細胞上でロボットのように働き、細胞表面から細胞内に侵入する性質を獲得することが分かった。ナノ粒子の挙動の観察には、共焦点顕微鏡、全内部反射蛍光顕微鏡および四次元顕微鏡を用いた。

蛋白導入ドメイン固層化ナノ粒子の運動 (出所:東北大学)

 

濃度依存性(受動的)とロボット型(能動的)の違い (出所:東北大学)

 
従来型のドラッグデリバリーシステムでは、細胞内への取り込みは受動的であり血中内濃度に依存するため、濃度を一定以上に上昇させることが細胞内への取り込みに必要だった。このため、濃度の上昇に伴って様々な副作用が起きていた。今回発見された仕組みでは、個々の粒子がナノロボットとしての性質を獲得し、細胞内へ能動的に侵入するため、導入効率が良い。血中内濃度を上昇させなくても細胞内へ取り込まれ、細胞導入効率の飛躍的改善と副作用の軽減が期待できる。今後、様々な性質のナノ粒子、ナノカプセル、高分子化合物、高分子薬物などの細胞内導入法として同手法が利用され、癌の治療・診断や再生医療への応用が進むとみられる。


発表資料

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