バークレー研究所、人工光合成システムの集積化に成功。ナノスケールの森林状デバイス

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米ローレンス・バークレー国立研究所が、人工光合成システムを集積化したナノデバイスを開発した。植物の葉緑体に似た構造を持つ樹木状の半導体ナノワイヤに太陽光を吸収させ、太陽エネルギーで水を分解して酸素と水素を生成する。集積化したデバイスは、樹木状ナノワイヤが多数配列されているため、ナノスケールの森林のように見える。2013年5月6日付けの Nano Letters に論文が掲載されている。

人工光合成デバイスの模式図 (Credit: Berkeley Lab)

植物の葉緑体には、酸化反応である光化学系 II と還元反応である光化学系 I という2種類の光合成反応中心が存在しており、これらが他のタンパク質複合体と組み合わさって、太陽光による水の分解と化学エネルギーへの変換経路を形成している。同様に、今回開発された半導体ナノワイヤも2種類の異なる光吸収層(二酸化チタンおよびシリコン)を持っており、これらが酸化還元反応による水からの水素・酸素生成を担う。

光陽極である二酸化チタン層は紫外線を吸収し、水の分解によって酸素と水素イオン(プロトン)を生成する。このとき水から電子を引き抜くので酸化反応である。一方、光陰極であるシリコン層は可視光を吸収し、プロトンから水素を生成する。こちらはプロトンに電子を供与して水素を作るので還元反応である。

樹木状ナノワイヤを配列したナノスケールの人工森林 (Credit: Berkeley Lab)

葉緑体では、太陽光の吸収によって光化学系が励起し、タンパク質複合体の間での電子の受け渡しが起こることで光合成反応が進行するが、このときの電子伝達系はアルファベットのZ字型のエネルギー勾配で表されるため「Z機構」と呼ばれている。今回の半導体ナノワイヤによる人工光合成システムも、葉緑体と同様に、Z字型のエネルギー勾配を示すという。

デバイスは、シリコンナノワイヤの幹と二酸化チタンナノワイヤの枝で構成された樹木状のヘテロ構造となっている。ナノワイヤはそれぞれ反応を促進するための共触媒を担持しており、シリコンと二酸化チタンの界面にはオーミックコンタクトが形成される。樹木状ナノワイヤを森林のように周密に配列することで、太陽光の反射を抑えつつ、水素・酸素生成反応を行うためのより大きな表面積を稼ぐことができるという。

人工光合成デバイスによる太陽光エネルギーから化学エネルギーへの変換効率は、現在0.12%となっている。これは自然の光合成と比べると低く、実用化するためにはもっと効率を上げる必要がある。現状での変換効率の制限要因としては、シリコン陰極と二酸化チタン陽極からの光電流の出力がマッチングしておらず、二酸化チタン陽極からの出力が低いといった理由がある。研究チームは、二酸化チタンを別の材料で置き換えることで、より高性能な光陽極の開発をめざしており、人工光合成システムの変換効率を1桁%台に引き上げられると考えている。


発表資料

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