ライス大学の研究チームが、グラフェン/ホウ素化合物の2次元ナノシートに高いリチウムイオン吸蔵能力があることを理論計算によって明らかにした。高容量リチウムイオン電池の電極材料として有望であるという。2013年5月6日付けの Journal of Physical Chemistry Letters に論文が掲載されている。
グラフェンは、重量当たりの表面積が 2630m2/g ときわめて大きいことから、リチウムイオン電池の電極材料への利用が期待されている。しかし、研究チームが行った第一原理計算によると、無欠陥の理想的なグラフェンのリチウムイオン吸蔵能力は、グラファイトと比べて低くなる。リチウムのクラスタ化および相分離によってリチウム吸蔵能力が制限されるという。
研究チームは、五員環や七員環などの構造欠陥や不純物原子などを含んだグラフェンのリチウム吸蔵能力についても理論計算を行った。その結果、ある種の構造欠陥を有するグラフェンでは、リチウムが安定的に結合することが示された。さらに、不純物としてホウ素をドーピングしたグラフェンが、高いリチウム吸蔵能力を持つことも明らかになった。
グラフェンの炭素原子のうち4つに1つをホウ素で置き換えた化合物 C3B のリチウム吸蔵能力が特に高くなり、単層 C3B では容量密度 714mAh/g 、積層した C3B では 857mAh/g という計算結果が得られた。これは、コバルト酸リチウム正極と組にしたときのグラファイト負極の容量密度 372mAh/g のおよそ2倍に相当する。また、充放電時に極端な体積の膨張収縮が起こらないことも、C3B の特徴であるという。研究チームは、グラフェン/ホウ素化合物を大量合成する方法を見つけることが次の課題であるとしている。
発表資料
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