理研、超薄板ガラスでバルブ作製。すべてガラス製のマイクロ流体チップ実現

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理化学研究所(理研)が、ガラス基板に刻まれたマイクロ流路内に柔軟性のある超薄板ガラス製バルブを組み込むことに成功。すべてガラスでできたマイクロ流体チップを実現した。バルブの応答が速く、すべてガラスでできているため、ほとんどの溶媒・溶質に対して安定であり、化学・生化学プロセスを集積化した汎用的なシステムへの応用が可能。特に、医療診断、一細胞単位での分離や培養・剥離・化学刺激などの操作、分子合成などの分野で有用なツールになると期待できる。理研生命システム研究センター 集積バイオデバイス研究ユニット 田中陽ユニットリーダーによる成果。2013年4月10日付け RSC Advances オンライン版に論文が掲載されている。

ガラス製マイクロ流体チップは、数cm角のガラス基板上に幅・深さ 1 mm以下の流路を形成し、化学・生化学プロセスを集積化したものであり、ほとんどの溶媒・溶質に対して安定なため、医療診断向けの小型・高速反応の次世代型デバイスとして期待されている。しかし従来、流体制御用バルブをガラスで作製し、これを硬いガラスチップの中に組み込むことができなかったため、流路をマイクロレベルで集積できるメリットが十分に生かせていなかった。一方、樹脂製のマイクロチップは柔軟性があり、バルブの組み込みが容易だが、有機溶媒と反応しやすいことや、気体を吸収してしまうという難点があり、高度な表面化学処理が必要な細胞のパターニングなどには物理的・化学的安定性の面で不向きだった。

図1 フッ素樹脂製の固定器具の外観図(A)と写真(B)(出所:理研)

 
今回の研究では、近年開発され市販されている厚さ6μmの超薄板ガラスに着目した。柔軟性が高く、フィルムのようによく曲がる特徴を持つ超薄板ガラスを材料に用いてガラス製バルブを作製。このバルブをピエゾ素子(圧電素子)と組み合わせることで流路の開閉を実現し、バルブも含めすべてガラスでできたマイクロ流体チップの作製に成功した。

図2 超薄板ガラスを用いたバルブ付き全ガラス製マイクロチップとバルブ駆動原理。ピエゾ素子に電圧を加えると、クッションとなるシリコンゴムブロックを通して超薄膜ガラスがしなり、流路がふさがる (出所:理研)

 
超薄板ガラスの材料には、無アルカリガラスが用いられている。無アルカリガラスを基板に熱融着するには、基板も無アルカリガラスにして、超薄板ガラスとともに割れや変形を起こすことなく、確実に両方を接着できる温度を設定する必要がある。また、超薄板ガラスはひずみを残すと割れやすく、柔軟性も失われる。そこでさまざまな加工条件を検討した結果、熱融着時は750℃、そこから700℃、650℃、600℃と徐々に冷却するよう工程を最適化し、超薄板ガラスをしなやかにすることに成功した。

図3 枝分かれ流路における流路切替の実証実験 (出所:理研)

 
液中でも超薄板ガラスを破損することなく取り扱えるようにするため、フッ素樹脂製の固定器具を用意した(図1)。これにより、流路を刻んだガラス基板への熱溶着を含め、超薄板ガラスのさまざまな加工が可能になった。6μm厚の超薄板ガラスバルブを幅5mm、約10cmの長さのリボン状に加工した後、マイクロチップ(7cm×3cm)の流路に組み込んだ結果、すべてガラスでできたマイクロ流体チップが完成した(図2上)。

チップの機能評価のため、ピエゾ素子を使って0.2 ニュートンの力(20グラム相当)で超薄板ガラスのバルブを押し曲げ、流路をふさいで流れを止める実験を行った(図2下)。まず、Y字型をした流路の下流の一方をネジでふさいで1本の流路とし、上流から微小ポリスチレン粒子を入れて可視化した流体を流し、バルブを開閉したときの流体の様子を観察した。次に、ネジを取ってY字下流の両方を開放し、バルブの開閉で上流からの流れを両方/片方と切り替えて観察した(図3)。その結果、バルブを閉めると流体は漏れなく止まった。この時のバルブの応答速度は0.12秒、バルブの耐圧は3.0kPaと、通常のマイクロ流路に流す圧力として問題ないことが確認された。


理研の発表資料

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