IBM、2000倍集光が可能な太陽光熱利用システムを開発。マイクロチャネルによる水冷で熱回収

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IBMチューリッヒ研究所らが、2000倍集光が可能な太陽光熱利用システム(HCPVT: High Concentration PhotoVoltaic Thermal system)を開発している。集光した太陽エネルギーは、80%の効率で電気や熱などの利用可能なエネルギー形態に変換される。同システムを使って、日照量の多い低緯度帯のへき地などに真水や空調冷却を供給することもできるという。

2000倍集光型太陽光熱利用システムの完成予想図 (Credit: IBM)

研究チームが試作したHCPVTシステムでは、太陽追尾装置を備えた大型のパラボラ型集光鏡を使用する。集光鏡に当たって反射した太陽光は、マイクロチャネルの付いた液冷型レシーバに集中する。レシーバは三接合型太陽電池を備えており、日照量の多い地域であれば1日8時間程度、太陽電池チップ 1 個(面積 1 cm × 1 cm )につき平均出力200~250Wで発電できる。

レシーバ全体で数百個の太陽電池チップが集まっており、発電出力は25kWとなる。集光された太陽光のうち30%超が、三接合太陽電池によって電気エネルギーに直接変換される。さらに、排熱のうち50%が効率よく回収される仕組みとなっている。既存の集光型太陽光発電システムでは、熱エネルギーは利用されずに大気中に放出されるが、HCPVTシステムでは、熱の回収を行うことにより、水の脱塩処理や吸着式冷却などに熱を利用できる。同時に、太陽電池チップの性能低下要因となるデバイス過熱を防ぐ効果もある。

太陽電池チップはマイクロ構造を有する層上に実装される。このマイクロ構造化層は、チップから数十μm程度離して冷却液を流すためのものであり、熱を吸収して効率よく放出する働きを持つ。この方式による排熱は、受動的な空冷方式と比較して効率が10倍以上良くなるという。

IBMとエジプト・ナノテクセンターが共同開発した集光型太陽光熱レシーバ (Credit: IBM)

 
冷却液によって、太陽電池チップの温度は、2000倍集光時でもほぼ一定に保たれる。集光倍率を最大5000倍まで上げても安全な温度を維持できる。微小なポンプ作用を用いた冷却液による直接冷却法は、人体に血液を供給する血管の枝分かれ階層システムにヒントを得て設計された。多数個のチップで構成した最初のレシーバ実証機は、IBMとエジプト・ナノテクノロジー研究センターが共同で行った先行研究において開発されたものであるという。

安価な材料を用いることで実用性を高めている点も、同システムの特徴である。構造材には鋼鉄の代わりに橋梁などに使用される超軽量・高強度のコンクリート材を使用。主要な光学部材もガラスではなく、圧縮空気を利用した金属箔の鏡を使って低コスト化している。マイクロチャネル冷却器などのハイテク部品はスイスで製造し、その他の部分の組み立てはシステム設置地域で行うことで、開発拠点であるスイスとシステム設置地域の両方における雇用創出が期待できるとしている。集光用光学部品の開発は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校が行う。

研究チームでは、低コスト化のための技術開発を進めることにより、開口面積 1 m2あたりのコストを250ドル未満(競合システムの1/3のコスト)に下げられると考えている。エネルギーコストは、1 kWhあたり10セント未満に下がると見込んでいる。ちなみに、現在のドイツのフィードインタリフは 1 kWhあたり25セント以上。石炭火力発電所の発電コストが同5~10セント程度となっている。


IBMの発表資料

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「IBM、2000倍集光が可能な太陽光熱利用システムを開発。マイクロチャネルによる水冷で熱回収」への2件のフィードバック

  1. おかしな実験ですね。熱を利用するか、太陽光の利点を利用するか1つにしたほうガよい。

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