イリノイ大ら、脳の深部に挿した極小LEDデバイスでニューロンを光刺激。光遺伝学用ツールとして期待

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イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とワシントン大学の研究チームが、脳の深部に直接挿入可能な極薄のフレキシブル発光デバイスを開発した。デバイスの先端にニューロンと同等サイズの微小なLEDを備えている。光刺激によってニューロンの興奮を制御する光遺伝学(オプトジェネティクス)のツールとして利用できる。2013年4月12日付け Science に論文が掲載されている。

フレキシブルリボンの先端に形成された極小LED。リボンは針の穴に通せる細さ (Credit: John A. Rogers)

研究リーダーであるイリノイ大学 材料科学・工学教授 John A. Rogers 氏は、同技術について「半導体部品を脳に直接組み込むための新たな方法」であると話す。微小な電子デバイスを生体組織の深部に挿入し、組織とデバイスを直接的に相互作用させることができるという。

今回の研究では、このデバイスの応用例として、神経科学の新分野である光遺伝学への適用を実証した。光遺伝学では、狙った神経回路に光刺激を与えることによって脳機能の精密な研究を行う。光刺激の利点は、個々の脳機能を分離して扱うことができることにある。こうした機能分離は、広範囲のニューロンに影響する電気的刺激や、脳全体に広がってしまう薬剤などでは不可能であるとされる。

光に対して特定のニューロンが反応するように遺伝子操作したマウスの実験では、光刺激で誘導されるドーパミン放出を制御することによって、餌などの物理的な報酬を与えなくてもマウスの行動を訓練できることが示されている。光遺伝学から得られる脳の構造・機能に関する知見は、アルツハイマー病、パーキンソン病、鬱病、不安神経症その他の神経疾患の治療に対しても役立つ可能性がある。

LEDを脳の深部に挿入。光刺激を付与して脳の構造・機能を調べる (Credit: John A. Rogers)

 
光遺伝学を進める上での技術的課題は、脳の深部の狙ったポイントに正確に光を当てるのが難しいということである。最も広く用いられているのは脳に光ファイバーを埋め込んでレーザー光を照射する方法だが、侵襲的な処置であるため、実験動物の動きを制限し、自然な行動を乱し、社会的相互作用についての研究を妨げてしまう。

研究チームが開発した技術は、特別に設計されたLEDによって、こうした制約を回避できるという特徴がある。LEDは細胞1個程度という世界最小サイズで、脳に直接光を照射できる。デバイスは、毛髪より薄く針穴よりも細いフレキシブルなプラスチック製リボンの先端に印刷されている。組織にほとんどストレスを与えずに脳の深部に挿入することができるという。

抜き差し可能な極細マイクロニードルを使って、LEDだけでなく、各種センサや電極などの能動素子を脳に埋め込むこともできる。素子への電力供給は、リボンを通して素子と無線アンテナおよび整流回路を接続することで、電波によって行う。このモジュールを実験動物の頭部に装着し、使用しないときにはリボンを抜いておく。

「複雑な挙動や社会的相互作用、自然な反応などを研究するためには、行動への制約を最小限にとどめる技術が必要とされる」と Rogers 氏は話す。今回開発されたシステムでは、動物が自由に動き回ったり、他の個体と接触できるようにしつつ、同時に脳の深部への光照射を完全かつ精密に制御できる。LED、温度センサ、光センサ、マイクロスケールヒータおよび電極を完備したデバイスプラットフォームを用いれば、脳の電気的活動を刺激しつつそれを記録することが可能になるという。


発表資料

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