東大、生きた微生物が電気エネルギーを作り出す機構解明。従来モデルの1000倍以上の効率で電気生産可能

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東京大学大学院工学系研究科の岡本章玄助教、橋本和仁教授、中村龍平助教(現・理化学研究所環境資源科学センター チームリーダー)らのグループが、生きた微生物が電気エネルギーを作り出すメカニズムを解明した。その結果、従来モデルと比較して1000倍以上高い効率で、細胞から電子を引き抜けることを明らかにした。微生物燃料電池の高出力化や、石油パイプラインや船底などの微生物による腐食抑制技術の開発につながることが期待される。2013年4月1日付けの米国科学アカデミー紀要(PNAS)に論文が掲載されている。

図1 分泌したフラビン分子を使って電子を流すしくみ。(A)従来型のモデル、(B)今回 明らかになった結合フラビンによって電子移動が加㏿される新規モデル (出所:東京大学)

鉄還元微生物は、有機物を酸化することで得た電子を、細胞外にある酸化鉄などの鉱物や電極材料に渡すことで代謝を行っている。この細胞外への電子移動過程は微生物燃料電池において鍵となる反応だが、その仕組みは明らかになっていない。

代表的な鉄還元菌である Shewanella oneidensis MR-1 は、細胞内部から細胞外膜へと電子を運ぶタンパク質群を持っており、細胞膜表面の酸化還元タンパク質シトクロムを介して電極へと電子を移動させる。その際、微生物は電子を運ぶことのできる有機分子であるフラビンを細胞の外に分泌する。溶解したフラビン分子が膜上シトクロムから電子を受け取り、電極へと濃度勾配によって拡散することで電子を運び、その結果、電子の流れが加速されていると考えられてきた(図1A)。しかし、生きた微生物がどのように電子移動を行っているかは、測定が困難なため、これまで直接的に確かめられておらず、微生物が電子の流れを加速する機構の詳細は不明だった。

図2 膜上シトクロムと結合したフラビンの量と微生物が流す電子量が正比例していることから結合フラビンが最も効率的に電子を流していることが分かる (出所:東京大学)

 
同研究グループは、鉄還元細菌が電子を流す仕組みの解明に向けて、微生物から流れる電子を直接的かつ高感度に観察するための電気化学計測システムの開発を行ってきた。今回、最適化した条件の下、微生物によって均一に覆われている電極を用いて、高感度測定法により微生物が実際に使っているフラビン分子の電気シグナルを追跡した。その結果、電極上でのフラビン分子は、微生物がいない場合と比べて、その電位や流す電子の数が明らかに異なることを見出した。このようなフラビン分子の性質の変化は、細胞膜上シトクロムを持たない遺伝子破壊株では観測されなかった。このことは、フラビン分子が膜タンパク質と相互作用することで状態を変化させていることを意味している。

また、膜シトクロムと結合したフラビンの量が増すたびに、微生物が作り出す電子の量は直線的に増えた(図2)。この結果は、フラビンがシトクロムと結合した状態が最も効率よく電子を流すことを明確に示している。さらに、熱力学計算を行うと、フラビンが膜シトクロムと相互作用していない場合に比べて電子の流れは103~105倍程度速くなっていることがわかった。微生物はフラビンを膜上シトクロムに結合させることで電子移動を著しく加速していることになる(図1B)。

細胞外電子移動過程を加速する機構が分子レベルで解明されたことで、微生物燃料電池の高効率化につながることが期待される。また、フラビン分子と膜上シトクロム間の相互作用を阻害すれば、電子の流れが抑制される可能性があることから、この作用を応用した微生物による金属腐食抑制技術の開発への展開も期待される。


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