パナソニックとナノフォトン、グラフェン評価の信頼性を高める反射分光/ラマンハイブリッド装置を開発

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パナソニックとナノフォトンが、同一試料・同一視野で反射分光イメージングとラマンイメージングを切り替えられるハイブリッド型レーザーラマン顕微鏡を開発した。同装置を用いることで、グラフェンの層数同定など試料評価の信頼性が高まると期待される。パナソニック株式会社 デバイスソリューションセンターの能澤克弥氏が、2013年3月28日に開催された第60回応用物理学会春季学術講演会シンポジウム「2次元層状物質の合成・評価技術」において成果報告を行った(講演番号28p-G12-7「顕微分光/ラマンハイブリッドイメージングによるグラフェン評価」)。

CVDグラフェン評価の課題

図1 作製したグラフェン試料の顕微鏡像 (出所:第60回応用物理学会春季学術講演会予稿集 28p-G12-7)

CVD成長させた大面積グラフェンの評価方法としては、ラマンイメージングがよく用いられている。グラフェンに光があたったときの散乱光に含まれているラマン散乱のスペクトルを分析することで、グラフェンの層数やエッジ構造など様々な情報を得ることができる。例えば、ラマンシフト1585cm-1付近にあるピーク(Gバンド)と2700cm-1付近にあるピーク(2Dバンド)の比G/2Dの値は、グラフェンの層数に比例する性質があるため、これを利用して層数の同定ができるとされている。

ただし、実際には、ラマン分光の情報だけでグラフェンの層数が同定できるとは限らない。G/2D比は、層数以外にも、様々な要因に影響されて大きく変化するためである。例えば、基板-グラフェン間の相互作用や、多層グラフェンの乱層積層構造などの影響によって、G/2D比の特徴が実際のグラフェンの層数に対応しない場合がある。

そこで研究チームは今回、従来のラマンイメージングに顕微反射分光イメージングを加えることによって、グラフェン評価の信頼性を向上させることを試みた。顕微反射率は干渉効果によって試料の光学定数と膜厚に依存して決まるので、顕微反射率の値から膜厚の情報を得ることができる。今回の研究では、グラファイトの光学定数を利用して、1層の厚さを0.35nm、2層の厚さを0.67nmと仮定した場合に、0層・1層・2層のグラフェンの反射スペクトルの測定結果とよく一致した。可視光の領域でのグラフェンの光学定数が層数や膜状態の変化にあまり依存しないため、グラファイトの光学定数を利用したモデルで単層~複数層グラフェンの反射を再現して層数を特定できるところがこの方法の特徴であるという。

反射分光/ラマンハイブリッド装置の開発

RAMANtouch (写真提供:ナノフォトン)

顕微反射分光とラマン分光の測定は、従来それぞれ別個の専用装置で行われていた。今回初めて、光学部品の切り替えだけで両方の測定を行えるハイブリッド型装置の開発を行った。同装置は、ナノフォトン製レーザーラマン顕微鏡 RAMAN-11(現在はRAMANtouchにモデルチェンジ) を改造し、反射分光測定機能などを付加する形で作製した。これにより、試料をまったく動かさずに試料内の同一エリアで顕微反射分光とラマン分光という2種類の情報を得られるようにした。各モードの切り替えは数秒でできるという。複雑な面内分布を持つ試料の評価などに効果を発揮する手法であると考えられる。

また、今回ベースとして使用したレーザーラマン顕微鏡は、ライン走査によってライン上のラマン散乱を多点同時測定する方式であり、取得したデータにフィッティングをかけることで特定波長に対応するラマン散乱だけを抽出する機能も備えている。この機能を使うと、あたかも特定波長の光だけで照明したかのような画像を得ることができるので、狭帯域の分光イメージング装置としても利用できる。

ハイブリッド装置による評価事例

このハイブリッド型装置を使った実際の評価事例を紹介する。試料としては、エピタキシャル銅触媒を用いてCVD成長させたグラフェン2枚を1つの基板上に重ねて転写したものを作製した。このような試料は、非AB型積層となるはずなので、AB型積層構造を持つ2層グラフェンとは違ったラマン分光を示すと予想される。一方、反射分光についてはAB型積層でも非AB型積層でも変わらないと予想される。

図2 転写後の単層および積層領域の反射スペクトル (出所:第60回応用物理学会春季学術講演会予稿集 28p-G12-7)

 

図3 積層領域における2点A・Bのラマンスペクトル (出所:同上)

 
図1(a)は、この試料の白色照明顕微鏡像である。画像から、各転写領域、積層領域、下地領域が確認できる。測定した顕微反射スペクトルとシミュレーションとの比較から、各転写グラフェンは単層であり、積層領域は2層分の厚みであることが確認できた(図2)。図1(b)は、波長460nmでの狭帯域イメージングである。この波長ではグラフェンは見えないが、転写時に載った樹脂などの残渣が確認できた。図1(c)は、グラフェンを観察するのに適した波長560nmでの狭帯域イメージングである。単層領域と積層領域の区別がはっきりと分かり、グラフェン上のシワも可視化することができた。

図1(d)は、同じ試料のラマンイメージングである。積層領域の中にピークの出方が異なる2つの領域AおよびBがあることが分かる。領域AはGバンドが極めて強く、2層でありながら高配向熱分解グラファイト(HOPG)と見間違えるほどの多層的な特徴を持っている。一方、領域BはGバンドのピークが浅く、単層領域とほぼ同じG/2D比を示している。こうしたラマンイメージングの差異は、グラフェンの積層状態の違いに起因して生じていると考えられる。

このように、層数同定に強い顕微反射分光イメージングと、物理化学的な状態分布の可視化に適したラマンイメージングを組み合わせた装置を開発したことで、グラフェンの層数と膜状態の切り分けが初めて可能になったといえる。

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