フラウンホーファーIWS、従来比7倍の長寿命リチウム硫黄電池を開発

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フラウンホーファー材料・ビーム技術研究所(IWS)が、リチウム硫黄電池の充放電サイクル寿命を1400サイクルまで延ばすことに成功したと報告している。これまでのリチウム硫黄電池の研究では、200サイクルを超えるのがやっとだった。今回、寿命を7倍程度延ばしたことになる。

ロール・ツー・ロール方式での電極作製 (Credit: Jurgen Jeibmann / Fraunhofer IWS Dresden)

負極材と正極材の組み合わせを工夫することで、ボタン型リチウム硫黄電池の長寿命化を実現した。従来のリチウム硫黄電池では負極に金属リチウムが用いられてきたが、今回は、金属リチウムよりも安定性の高いシリコン炭素化合物を負極材とした。シリコン炭素化合物負極には、金属リチウムに比べて、充電プロセス中の負極の構造変化が少ないという特徴がある。金属リチウムのように負極の構造変化が激しいということは、それだけ負極と電解液との反応性が高いことを意味している。この反応プロセスによって、電解液(正極と負極の間でリチウムイオンの移動を担う媒質)がガスと固体に分解されていき、電池が乾燥してしまうという問題がある。極端なケースでは、負極側に成長した析出物が正極側に到達して短絡が生じ、電池の動作が止まることもある。

負極と正極の相互作用は、電池の性能と寿命を決定する重要な要素であるといえる。リチウム硫黄電池では、正極材として安価で豊富に存在する硫黄元素を用いているため、リチウムイオン電池で使われているコバルト酸リチウムなどの正極材と比べると、電池の低コスト化を進められると期待できる。ただし、硫黄正極にも問題はある。硫黄もまた、電解液との反応性が高いため、これに起因して電池の性能が損なわれることがある。最悪の場合、電池の容量が完全に失われることもある。

研究チームは、硫黄正極と電解液との反応プロセスを遅くするために、多孔質カーボンを利用している。多孔質カーボンの孔を精密に調整して、硫黄がカーボン中に長く留まるようにすることで、硫黄と電解液が結合する速度を抑えられるという。

IWSでは、長期的にリチウム硫黄電池のエネルギー密度を最大600Wh/kgまで高められると予想している。現在のリチウムイオン電池の最大エネルギー密度250Wh/kgと比較して、大幅な容量増加が見込めることになる。中期的には、リチウムイオン電池の2倍の500Wh/kg程度がリチウム硫黄電池の現実的なエネルギー密度になると考えられている。これは、電気自動車用二次電池として使用すれば、同じ電池重量のリチウムイオン電池と比べて2倍の航続距離が稼げることを意味する。

電池を軽量化することもできるので、スマートフォンなど携帯電子機器用電池としても有望であるといえる。研究チームは現在、材料のさらなる最適化のための研究を進めており、より大型の電池モデルへの適用に取り組んでいるとのこと。また、量産に適したリチウム硫黄電池の製法開発にも関心を向けているとしている。


発表資料

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